マクラーレンのレーシングディレクターを務めるエリック・ブーリエが、ホンダの2016年仕様パワーユニット開発が予定よりも遅れていることを明らかにした。
■チーム管理体制変化を控えるマクラーレン
パワーユニットサプライヤーとして2015年に7年ぶりにF1復帰を果たしたホンダだが、その初年度の挑戦は悲惨な結果に終わっていた。ホンダは2016年シーズンに向けて、プロジェクト責任者を交代させたが、これに関してはブーリエも歓迎しているようだ。
だが、マクラーレンも今後チームの最高経営責任者としてフォルクスワーゲンのモータースポーツ責任者であったヨースト・カピートを迎え入れることになっている。まだ具体的な着任日は明らかとなっていないが、ブーリエにも新たなボスができるとあって、そちらに関してはブーリエも心穏やかではないかもしれない。
9日(水)に『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』からカピートの加入に関する意見を求められたブーリエは、次のように答えた。
「私が彼を雇ったわけではない。その件はロン・デニス(マクラーレングループ会長)に尋ねたほうがいいと思うよ」
「だが、彼の経験はマクラーレングループの役に立つはずだし、マクラーレン・レーシングはその一部でしかない。彼は大手メーカーでの経験も持っているし、ホンダとの関係においてもそれが役立つだろうね」
■ホンダはまだスケジュールより遅れている
実際のところ、マクラーレンに速いF1カーを造ることができる実力があることを疑うものはいないだろう。現在チームが抱えている問題の多くは、コンビを組んでいるホンダのほうにあると考えられている。
2016年型車MP4-31の開発状況に関して質問されたブーリエは、次のように答えた。
「マクラーレン側はスケジュール通りに進んでいるよ。エンジンに関しては、まだそうではない。だが、ホンダにもいい進歩の兆候が見られるよ」
「我々は、少なくとも2回目のテストの週からクルマの開発を始めることができた。それは昨年には不可能だったことだ」
だが、ファンが最も強い関心を寄せているのは、ホンダが今年からトップ争いができるほどの大きな進歩を見せ始めることができるかどうかだろう。
「クルマはまだ望むようなレベルには至っていないよ」と認めたブーリエは、「エンジンがまだ2016年に計画していたような数値レベルには到達していないんだ」と付け加えた。
■それでも今年は大きな飛躍が可能
しかし、マクラーレン・ホンダでの2シーズン目を迎えるフェルナンド・アロンソは、このところかなり強気な発言をしており、2016年シーズン後半には表彰台すら狙えるだろうとコメントしている。
ブーリエも、「それが可能にならなくてはいけないと思っている」と語り、今季の開幕戦F1オーストラリアGP(20日決勝)ではソフトウエアの改善によって「30馬力」のパワーアップが可能となると考えていると明かした。さらに、ホンダは今シーズン中に使用することができる「トークン」を用いて、最大限の開発を行うことを計画しているという。
「私は、メルセデスAMGに勝つつもりだと言っているわけではないよ。だが、我々は大きく改善できるよ」とブーリエは付け加えた。
アロンソは、シーズン序盤の数戦を経て、F1がヨーロッパに戦いの場を移すころにはマクラーレンのシャシーがライバルたちと比べても最高レベルにまで到達できるだろうと期待していると語っていた。
ブーリエは、「ここまでのところ、我々は彼との約束をすべて守ることができている」と語り、次のように続けた。
「彼は、我々が計画していることのシミュレーションに目を通しているし、今ではそれをすべてサーキットで実現できるところまできているんだ」
■今季の成績はホンダ次第?
だが、アロンソが今季に向けてかなり高い目標を掲げて見せていることについて、これはマクラーレン・ホンダに対する最後通告として行っているのではないかと推測している者も少なくない。2017年までマクラーレン・ホンダとの契約があるアロンソだが、今季それくらいのことが達成できないようであれば、今後のことは分かりませんよというプレッシャーをチームにかけているというわけだ。
チームにとって、アロンソは時限爆弾のようなものではないのかと質問されたブーリエは、それに対して次のように答えた。
「今以上のプレッシャーはないよ。勝ちたいと思っているのは我々も同じだ。フェルナンドだけがそれを望んでいるわけじゃない。マクラーレンは勝たなくてはならないんだ」
「もし、ホンダが今年所定のレベルまで到達できれば、我々は最高レベルのクルマを持つことになる。そうすればフェルナンドもまた楽しみが持てるはずだ」
「私は最高のクルマをサーキットに持ち込むためにマクラーレンに雇われているんだ。クルマに関しては私の責任だ」
そう語ったブーリエは、「エンジンに関しては、責任は持てないよ」と付け加えた。