ミハエル・シューマッハを擁して2000年から2004年まで5年連続でドライバーズタイトルを獲得したフェラーリだが、その後は2007年のキミ・ライコネンを最後にF1チャンピオンを生むことはできていない。
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シューマッハと共にフェラーリの黄金時代を築いた立役者の1人が、当時チーム代表を務めていたジャン・トッドであるのは間違いない。
フェラーリ離脱後、2009年10月から2021年12月までFIA(国際自動車連盟)の会長を務めていたトッドが、母国フランスのテレビ局『Canal Plus(カナル・プリュ)』のインタビューに応じ、最近のフェラーリについて語っている。
■フェラーリにはほかのチームとは違うところがある
「フェラーリは少しばかり違うところがあるチームなんだ。なぜなら、ほかのチームにはない感動と情熱を生み出すからだ」
そう語った77歳のトッドは、次のように続けた。
「そして、もしそれがうまくいかなければ、メディアやティフォシからのプレッシャーによって(チーム代表を)変えなければならなくなる傾向がある。そして、それは必ずしもよいことではないよ」
■重要なのはチームの“安定性”
トッドはマラネッロチームを比類なき成功に導いた時代を回想し、現在のチームにはない安定性の重要性を強調した。
「私がボスだった当時、私はひとつのアドバンテージを持つことができていたし、それによって我々が成功を収めることができた。それはまさしく安定性の恩恵を受けることができたということだと思っている」
実際、逆境に直面しても、トッドと当時のフェラーリは持ちこたえることができていた。
「なぜなら、変化を求める強いプレッシャーがしばしばあったにもかかわらず、我々はそのプレッシャーに屈することなく、困難な局面にあっても、団結し続けたからだ」
そう続けたトッドは、次のように付け加えた。
「そして、それが実を結んだんだ」
■今のフェラーリに足りないものは“少しだけ”
しかし、トッドは、現在のフェラーリにもポテンシャルはあると考えている。
「2009年に私が去ってからは、最高のチームのひとつだと思う。最高のチームではなかったがね。2009年より後はベッテルを擁するレッドブルが支配したし、ハミルトンを擁するメルセデスが支配してきた。そして今はフェルスタッペンが支配しているからね」
そう語ったトッドは、フェラーリの勝利と敗北を分ける微妙な差について次のようにコメントしている。
「足りないものはそう多くはないよ。とは言え、最後の1000分の1を得るのが最も難しいことも我々はよく知っている」
「だから、今年はそうではなかったが、来年はそうなるかと言えば、正直なところ、そうあってほしいと願ってはいるが、私にはわからない」。
トッドはそう語ると次のように付け加えた。
「勝つためにはすべての要素をまとめなければならないんだ。そして現時点においては、それが少し欠けている。多くはないが、少しだけね」
昨年までチーム代表を務めていたマッティア・ビノットに代わって今季からフェラーリを率いているフレデリック・バスールにとっては、その“少し欠けている”要素をいかにまとめるかが今後に向けた重要な課題となりそうだ。