元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは、グランプリにおいてドライバーの健康を守るためにF1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が介入する必要はそれほどないと考えているようだ。
■多くのドライバーが体調問題を抱えたカタールGP
先週末に開催された今季のF1第18戦カタールGP決勝では、複数のドライバーがヘルメットの中で嘔吐したり、極度の脱水症状や熱中症に見舞われるなど、暑さと高湿度の中での厳しい戦いを強いられていた。
実際、ウィリアムズで今季F1デビューしたルーキーのサージェントは体調不良を訴え、レースを途中で諦めてリタイアしている。
F1ドライバーによる任意団体であり、主に安全対策などの議論の場となるGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の理事を務めるメルセデスのジョージ・ラッセルによると、ライバルドライバーの多くが「気絶寸前」だったと認めたという。
■FIAは今後に向けて対策を検討
こうしたことを受け、FIAは統括団体としてその責任の一部を認め、ドライバーたちが「健康や安全が脅かされるような状況下で競争することを期待すべきではない」と声明の中で語っている。
そして、近々開催されるFIAのメディカル委員会では、レーススケジュールの調整や、ドライバーやチームへのガイダンス、コックピットの換気改善など、さまざまなアイデアが話し合われる予定となっている。
■ドライバーの体力の問題に過ぎないとベルガー
だが、F1で210戦を戦い、10勝をあげた実績を持つベルガーは、ドライバーたちにはほとんど同情していないようだ。
「それは我々も同じだったよ」
母国オーストリアの『Servus TV(セアヴスTV)』にそう語った64歳のベルガーは、次のように続けた。
「今回、あの子たちは限界に達していたようだ。だが、それは単に体力の問題だよ。体調が非常によければ、具合が悪くなることはないんだ」
ベルガーによれば、現在のF1ドライバーたちは、80年代や90年代に比べれば全体的に体力も向上しているという。そして、1990年から92年までマクラーレンに所属していたベルガーは、そのときチームメートだった伝説的F1ドライバーであるアイルトン・セナは自分より体力があったことを認めている。
■暑さや湿度は予め対策しておくべき要素
高温と高湿度に悩まされた先週末のカタールで現在のドライバーたちが示した反応について質問されたベルガーは、次のように答えている。
「それは体力の問題であり、循環器系の問題なんだ」
「フェルスタッペンやハミルトンに聞けば、彼らはあの気温でも気分が悪くなったりはしないよ。なぜなら、もし勝ちたいと思うのであれば、それは常に注意しておかなくてはならない要素だからね」。
とは言え、若い頃にはベルガーもレースで体調不良を起こすことがしばしばあったという。
「私自身もときどき限界に達することがあったよ。特にキャリアの前半にはね。そして、私は自分の限界になんとか対応しなければならなかった。アデレード(オーストラリア)での暑いレースでは最後の数周でスピードを落とさなければならなかったんだ。今回目にしたような状況に陥らないようにね。もちろん、その結果として順位を落としてしまったよ」
そう語ったベルガーは、次のように付け加えた。
「私も気分が悪くなることがよくあったよ。なぜなら、私には体力がなかったからさ」。