FIA(国際自動車連盟)会長のモハメド・ベン・スレイエムが、今後は実務から一歩引くことを明らかにした。
■F1との関係悪化が噂されていたFIA会長
昨年12月にジャン・トッドの後任として新たなFIA会長に選出されたアラブ首長国連合出身のベン・スレイエムだが、最近ではF1ドライバーたちの政治的発言を禁止したり、買収の話題が浮上したF1に関して株価操作の可能性を示唆する発言を行ったり、女性差別的なコメントを行ったりしたことなどから、F1オーナーのリバティ・メディアやF1チームとの関係がかなり悪化していると伝えられていた。
さらに、伝えられるところによれば、FIA会長としてのベン・スレイエムの働き以前に、F1関係者の間では、かつてはラリードライバーとして活躍した経験も持っている現在61歳のベン・スレイエムのパーソナリティーに問題があると考えている者も少なくないようだ。
「FIAの表彰式において、彼はステージ上で自分がラリーをやっていたころのことを話し始めたんだ。私にはクリスチャン・ホーナー(レッドブル/チーム代表)とマックス・フェルスタッペン(レッドブル/2022年F1チャンピオン)が『なんだこれは』と思っているのがわかったよ」
母国オランダの『De Telegraaf(テレグラーフ)』にそう語った元F1ドライバーのクリスチャン・アルバースは、次のように付け加えた。
「とりわけ、ステファノ・ドメニカリ(F1最高責任者)には笑わざるを得なかったよ。彼の顔がすべてを物語っていたよ」
■新たなF1との窓口は元フェラーリのトンバジス
そして、ベン・スレイエムはこのほど全F1チームに宛てた手紙の中で、自分は今後実務から一歩身を引き、「非業務執行会長」としてFIAの運営に携わっていくことを明らかにした。
その手紙の中で、ベン・スレイエムは、今後F1に関してはFIAのシングルシータ-ディレクターを務めるニコラス・トンバジスが中心となって管理していくことになると次のように語っている。
「今後は、F1に関する日常的連絡先はニコラスと彼のチームとなる」
「私は、首脳部とともに戦略的な事柄に集中していくことになる」
2014年までフェラーリのチーフデザイナーを務めていたギリシャ出身のトンバジスは、近年はFIAの技術責任者として技術レギュレーションの策定などに携わっていた人物だ。
■これは最初から計画されいたステップだとFIA
今回の進展に関してドイツの『Bild(ビルト)』から質問を受けたFIAのスポークスマンは次のように答えている。
「この計画は、彼が選出される前に、会長としてのマニフェストで明確に打ち出されていたものだ」
「FIA会長は世界のモータースポーツとモビリティの幅を広げるという広範な責任を負っており、F1の構造改革が完了した今、これは自然な次のステップだ」