ミック・シューマッハが今シーズン限りでハースのシートを失うことが確定的になったようだと報じられている。
■アメリカGPでポイント獲得に失敗したシューマッハ
今季ハースで2年目のF1シーズンを迎えている23歳のシューマッハだが、先週末にオースティンで行われた2022年F1第19戦アメリカGPを迎えるにあたり、チームオーナーのジーン・ハースから、2023年もシートをキープしたければポイントを獲得する必要があると警告されていた。
そのシューマッハは、アメリカGP決勝で一時はポイント圏内を走行していたものの、マシンのダメージとチームのピット戦略によって最終的に順位を下げて14位でフィニッシュ。もちろん、目標としていたポイント獲得はならなかった。
一方、チームメートのケビン・マグヌッセンは、レース開始直後には最後尾にまで順位を下げてしまったものの、最終的には9位でフィニッシュ。その後フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)がペナルティによって降格されたことから8位に繰り上げとなり4ポイントをチームに持ち帰っている。
■シューマッハとマグヌッセンの結果をわけたピット戦略
このレースでシューマッハとマグヌッセンの順位の違いを生んだファクターのひとつがピット戦略だった。2人はいずれも一番硬いハードタイヤでレースをスタートしていたが、同じ18周目にピットインし、やはり同じミディアムタイヤに交換している。
シューマッハはその後ポイント圏内の10番手を走行していたものの、33周目に再びピットに入り、そこでハードタイヤに交換。一方、マグヌッセンはミディアムタイヤのままで走行を続ける1回ストップ作戦を敢行し、一時は6番手にまで順位アップ。さすがにレース終盤にはタイヤの摩耗が進んで順位を下げたものの、最終的には前述のように9位でチェッカーを受けていた。
■チームのピット戦略に不満を表したシューマッハ
レース後、シューマッハは自分も2回目のタイヤ交換なしで最後まで走れていたはずだと次のように語っていた。
「僕はコース上に留まっていられると感じていたよ」
ハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーは、ドイツの『Bild(ビルト)』紙からアメリカGPでシューマッハがポイントに手が届かなかったのはハースの戦略のせいだったのかと尋ねられたものの、「コメントしたくない」と答えたのみだったという。
■マグヌッセンを賞賛したチームオーナー
しかし、ハースF1チームにとってのホームレースだったからだろうか、珍しくオーナーのハースがシュタイナーに代わって『Bild(ビルト)』に次のように語った。
「ミックとケビンが入ってきたとき、彼らには同じタイヤが装着されたんだ」
「ミックが再びコースに出たとき、彼は集団の中に入ってしまい、そこに留まってしまった。一方、マグヌッセンは後方に下がってタイヤを温存したんだ。ミックがタイヤを使い切る間にね」
「マグヌッセンは、ミディアム(タイヤ)で37周するという、ほかには誰もできなかったことをやってのけた。それによって彼は最終的に数ポイントを獲得することができたんだ」
■ハースの意図は明らかだとドイツ出身元F1ドライバーたち
シューマッハと同じドイツ出身の元F1ドライバーであるティモ・グロックは、レース後にシューマッハが見せた仕草は、ハースが彼と2023年の契約を結ぶつもりがないことを示す、これまでで最も明確なサインだったと語り、次のように続けた。
「今のところ、彼にとってのハードルは非常に高いよ。彼がいいパフォーマンスを発揮していないからではなく、ハース内部に違う考えがあるからだ」
「どの程度まで決定しているのか私にはわからない。だが、行間を読めば、ハースが何をしようとしているのかがわかるんじゃないかな」
同じくドイツ出身の元F1ドライバーであるクリスチャン・ダナーも、ドイツのテレビ局『Sport1(シュポルト1)』に次のように語っている。
「問題は、列車がすでに駅を出発したのかということだ。そして、すべてのニュアンスを分析すれば、おそらく彼ら(ハース)が彼(シューマッハ)を追い出したいと思っていることがわかるだろう」
■ハース首脳陣に熟慮を求めるラルフ・シューマッハ
一方、シューマッハにとっては叔父にあたるラルフ・シューマッハは、兄ミハエルの息子がハースで苦しい立場に置かれていることを認めながらも、ハースの首脳陣はその決断に関しては慎重に考える必要があると次のように主張している。
「ミックは2023年もハースで走り続けるためにやるべきことはすべてやったよ」
「もし、ジーン・ハースとギュンター・シュタイナーがきちんと考えれば、ミックに代わる者がいないことも理解することになるだろう」
『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』にそう語った47歳のラルフ・シューマッハは、ハースが獲得を望んでいると言われているダニエル・リカルド(マクラーレン)や、有力候補のひとりだと考えられているニコ・ヒュルケンベルグ(アストンマーティン/リザーブドライバー)に言及しながら、次のように付け加えた。
「リカルドが来ることはないし、ニコ・ヒュルケンベルグはサーキットでまた大暴れするよりも引退に向かう可能性の方が高いよ」