F1第11戦オーストリアGP(レッドブル・リンク)の予選が行われたが、メルセデスF1は2台ともQ3でスピン、クラッシュしてしまった。
●【2022F1第11戦オーストリアGP】予選Q1-Q2-Q3のタイム、周回数
予選ではメルセデスF1の2名のドライバーだけが限界でアタックしているのではなく、全ドライバーが限界ギリギリで全力でアタックしている。
ではなぜメルセデスF1は2台ともスピンしてクラッシュしたのか?その理由は大きく2つ考えられる。
■理由1:マシンが速さを見せ始めた
1つ目はマシンがかなりの速さを見せ始めていること。
速さだけならレッドブルF1もフェラーリはもっと速い。しかし、この2チームは別次元の速さだ。
メルセデスF1はこの上位2チームのレベルに追いつき追い越そうとしているが、これまではポーパシングとバウンシングが酷くてそれどころではなかった。
しかし、マシンの跳ねがようやく落ち着いてきたところで、やっとマシンの潜在能力を引き出す作業に集中できるところまで辿り着き、パーツを変えたりセッティングを変えたりしながらマシンの本来の速さを限界まで引き出そうとして、それが速さにつながり始めている。
あのスピンはただドライバーがミスしたのでは?という視点もあるかもしれないが、ルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルのドライビングスキルがかなり高いことは有名で、これまでの結果を見れば疑う余地はないだろう。
また、あのスピンを見て、ドライバーの単純なミス、またはマシンが悪いから、という一言で終わらせることもできるかもしれないが、2人はやっとまともにドライビングできるようになったマシンで、限界まで速さを引きだそうとチャレンジしている。これまではバウンシングが酷くて限界に挑戦することなど到底できなかったことだ。
やっとマシンがスムーズに走るようになり、マシンの限界まで走れるようになったことで、ドライバーは限界まで攻めて走ることで本当に速いセッティングを探っており、走りを楽しんでいるようにも見える。
よって、あのスピンは、やっと攻められるようになって、攻めすぎた結果のスピンだったと言えるだろう。もちろん、クラッシュは予算制限がある中で喜ばしいことではない。しかし、限界点でのマシンの動きを知ることが出来たのは、大きな収穫になっただろう。
■理由2:硬いマシン
2つ目はメルセデスF1のマシンはかなり硬いクルマということだ。
もしセッティングがうまくハマって、そのウインドウ内であればかなりの速さを見せられるというのは、メルセデス内のシミュレーションでも出ている。だからコンセプトを変えることなくここまで取り組んできた。しかし、そのウインドウは非常に狭く、少しでも外してしまうとまったく速さを引き出せなかったり、うまくコントロールできないのがメルセデスF1の特性のようだ。
また、他チームと比べても硬いマシンだと言われており、限界を超えた途端に急激に滑り出してしまって止めることが難しいマシンのようだ。
速さという点では硬いのは悪いことではないが、ドライビングスキルがかなり高くないとマシンの扱いが難しいし、それが自分の好みでないとさらに扱いにくいマシンになる。
さらに今年の新世代マシンはかなり重くなっており、走行中に一度バランスを崩すと従来のマシンのようにカウンターで立て直すのが非常に難しそうだ。
そして、今年の18インチタイヤの特性としても、温まりにくく、絶対的なグリップも低く作られており、こうしたタイヤの変化も影響している。
また、上記以外でスピンの原因としてもう一点考えられるとしたら、たまたま突風が吹いたこと。山間部にあるサーキットということで、この日は時折、風速10m/sもの非常に強い風が吹いており、ナイフエッジ状態でギリギリまで攻めていた際に突風が吹いてバランスを崩したということも考えられる。
いずれにせよメルセデスF1が昨年までのように、そして今のトップ2チームのように、限界ギリギリで攻めすぎなくても速いマシンに進化した時、本当の三つ巴の戦いが見られるだろう。