先週末にモントリオールで行われた今季のF1第9戦カナダGPでは予選17番手、決勝は12位と、あまり目立った活躍を見せることができなかったセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)だが、レースとは違うところで注目を集めることになってしまったようだ。
■カナダの環境対策を批判するTシャツやヘルメットを身につけたベッテル
最近は環境問題に強い関心を抱いていることで知られるベッテルだが、先週末には「カナダの気候犯罪」を非難する特注のTシャツを身につけてジル・ビルヌーブサーキットのパドックに姿を見せていた。
そして、34歳のベッテルはその後さらに、「タールサンド(鉱物油分を含む砂岩)の採掘をやめろ」、「カナダの気候犯罪」といったメッセージが描かれたヘルメットを被って金曜日のフリー走行セッションと土曜日に行われた予選に臨んでいた。
■カナダのエネルギー担当大臣がベッテルを批判「スポンサーのアラムコは世界最大企業だ」
だが、この行為がアルバータ州のエネルギー担当大臣を務めるソーニャ・サベージの怒りを買ってしまってしまったようだ。
サベージ大臣は、現在アストンマーティンのタイトルスポンサーを務める石油会社サウジアラムコは「世界のすべての会社の中で1日の石油生産量が最大」であり、「1965年以降、あらゆる企業の中で、世界の二酸化炭素排出量に最も貢献している唯一最大の企業だと言われています」と主張。
そして、その「サウジアラムコの支援を受けて」ガソリンを大量に消費しているF1ドライバーのベッテルは“偽善者”だと非難したのだ。
そして、日曜日に行われたカナダGP決勝では、ベッテルはその環境問題メッセージ入りのヘルメットは使わず、ドイツカラーの入ったいつもの白いヘルメットで戦っていた。
■今は話したくないとベッテル
母国ドイツのテレビ局『RTL』からそのことについて質問されたベッテルは、それには答えようとせず、「ほかの質問はある?」と返しただけだった。
また、ベッテルは『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』にも次のように語っている。
「今はそれについて何も言いたくないんだ。だけど、僕はいつも複数のヘルメットを持っているよ」
■すべてベッテル自身の判断だとアストンマーティンF1チーム代表
アストンマーティンのチーム代表を務めるマイク・クラックは、ベッテルが誰からもそのヘルメットを使用しないように命じられたわけではないと語り、次のように続けた。
「彼はヘルメットとTシャツを利用して、この話題に注目を集めようとしたんだ」
「ある時点で、彼はもう注目を集めることはできたと判断したのさ」
「あなたや私と同じように、彼も毎日同じTシャツを着ているわけじゃないよ」
笑いながらそう語ったクラックは次のように付け加えた。
「こういうキャンペーンは主に金曜日と土曜日に行われることはこれまでに見てきた通りだよ。だが、もちろん彼は自由に自分で決断することができる。彼は自由人だからね」
■大臣が個人攻撃を行ったのにはちょっとがっかりだとベッテル
一方、ベッテルは、今回の気候変動に対するメッセージを発信したことで、サベージ大臣が自分に対して個人攻撃を行ったことを非難している。
「政治家が個人レベルで物を言うのはちょっとがっかりだね。これは全く僕だけの問題ではないからね」
そう語ったベッテルは次のように付け加えた。
「確かに、僕は自分の生活のために、あるいは自分が大好きなことをしている偽善者だよ。だけど、未来をもっと持続可能なものにするための解決策はあるんだ」。