ある匿名のF1関係者によれば、今季のF1第9戦カナダGPが開催された先週末のモントリオールで行われた会議において、メルセデスのチーム代表を務めるトト・ヴォルフが完全に“アブダビ仕様”と化してしまっていたという。
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“アブダビ仕様”とは、もちろん、大論争を呼んだ2021年のF1最終戦アブダビGPにおいて、ルイス・ハミルトン(メルセデス)の手から通算8回目のF1ドライバーズタイトルが滑り落ちることになってしまった終盤のレース運営に対してヴォルフが怒りを爆発させていたことにひっかけたものだ。
■ポーポイズ現象問題で対立するメルセデスとレッドブル
モントリオールでの会議では、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が示した“ポーポイズ現象”への対応問題に関する議論が行われていたのだが、伝えられるところによれば、ヴォルフがレッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーに対して感情を爆発させていたようだ。
ホーナーは、今回FIAがポーポイズ現象対策に動いたのは、自分たちのマシンをうまく2022年に導入された新しい技術レギュレーションに対応させることに失敗したメルセデスが働きかけたことによるものだと主張したようだ。
ホーナーは、この件について次のように語っている。
「メルセデスというひとつのチームが最大の問題を抱えており、そしてFIAがシーズン半ばにそれに反応したんだ」
「マシンのセットアップを事実上決定しているFIAに、そういう権限を押しつけようとする人たちがいるという事実は、明らかに熟慮に欠けることだ」
「あるチームが的を外したからといって、シーズン途中でルールを変更するのはフェアではないよ」
ホーナーの同僚でありレッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコも、FIAの動きは「意味のない」ことだと主張し、ハミルトンが3位表彰台に上ったカナダGP決勝に言及しながら次のように語った。
「今日、ハミルトンはすぐにクルマから降りていたよ」
「どうやら表彰台に上ると、背中がかなり楽になるようだね」
■ほかのチームが不誠実だとメルセデスのヴォルフ
ともあれ、モントリオールの会議では、ホーナーを始め、フェラーリのチーム代表であるマッティア・ビノットを含むほかのチームの首脳たちがヴォルフに反対の意思表示をしたことで、ヴォルフの感情が爆発してしまったようだ。
しかし、ヴォルフは逆に、ほかのチームたちがメルセデスに不利になるように政治的動きをしているのだと主張している。
「この状況は明らかに行き過ぎているよ」
そう語った50歳のオーストリア人であるヴォルフは次のように続けた。
「チーム代表たちが政治的な駆け引きをしようとするのは不誠実だ。何らかの形で苦しんでいるチームはメルセデスだけではないんだからね」
「しかし、背景にこうした工作があり、こうした伝言ゲームが行われていれば、少しばかり困難だ」
■ドライバーの健康問題を軽視しているわけではないとレッドブル
一方、マルコは、レッドブルはマックス・フェルスタッペンを含むドライバーたちの長期的な健康被害を軽視し、純粋に競争上の理由だけでこの問題に反対しているわけではないと母国オーストリアのテレビ局『ORF』に次のように語っている。
「ドライバーたちは我々が有する最大の資産のひとつだよ」
「我々は彼らが最高の体調にあるようにしている」
■シーズン途中でのルール修正がメルセデスに不利となる可能性も
マルコはさらに、ルール変更を望むメルセデスの戦略が裏目に出る可能性もあると警鐘を鳴らしている。
「すべての設定値があまりにもリスクが大きすぎるんだ。チャンスに身を任せることになってしまうだろう」
FIAが提示したポーポイズ現象対策に言及しながらそう語ったマルコは、次のように付け加えた。
「だが、それは主に一番文句を言ったチームに影響を与えることになるだろうね」
ともあれ、FIAが打ち出したポーポイズ現象対策が今後どのような形で実行・管理され、どのような結果を導くことになるのかに注目が集まっていくのは確かだろう。