ルイス・ハミルトン(メルセデス)が、今週末にモントリオールで開催される2022年F1第9戦カナダGP(19日決勝)を欠場するのではないかという憶測を一蹴した。
■ハミルトンのカナダGP欠場の可能性を示唆していたメルセデス
ハミルトンは、先週末にバクーで開催されたアゼルバイジャンGP決勝を4位でフィニッシュしたものの、高速走行時にマシンが激しく上下に振動する“ポーポイズ現象”によって身体にダメージを受け、レース後にすぐにマシンを降りることもできない状態だった。
これを受け、メルセデスのチーム代表を務めるトト・ヴォルフは、カナダGPではハミルトンの欠場に備えてリザーブドライバーをスタンバイさせることになると示唆していた。
■欠場を否定したハミルトン「深刻なけがはない」
だが、ハミルトンはインスタグラムを更新し、その中でアゼルバイジャンGP決勝が行われた12日(日)の夜は「眠れないほど」だったものの、「痛みと打撲」があるだけで「深刻な」けがはしていないと書き、次のように続けている。
「はり治療とアン(ハミルトン担当の理学療法士兼アシスタントであるアンジェラ・カレン)による理学療法を受け、一緒に改善するためにチームと合流するところだ。僕たちは戦い続けなければならない」
「今ほど団結が必要な時はないし、僕たちはそうしていく。僕は今週末も絶対に参加するよ」
最近では、メルセデスのヴォルフや今年からハミルトンのチームメートを務めているジョージ・ラッセルが、ポーポイズ現象をなくすためのルール改正の必要性を主張している。
だが、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によれば、ハミルトンはバクーで行われたドライバーズミーティングにおいてポーポイズ現象をなくすためのルール変更の必要性について積極的に発言することもなかったという。
■ポーポイズ現象対策はチームが行うべきことだとレッドブルのボス
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、メルセデスはルールを変更させるために単に「文句」を言っているだけに過ぎないと主張している。
「もし、グリッド全体が本当に安全性の懸念を抱えているのであれば、それは検討するべきだろう」
そう語ったホーナーは、次のように付け加えた。
「だが、もしそれが特定の人たちやチームだけに影響を及ぼしているのであれば、それはそのチームが対処すべきことだろう」
レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、それに付け加えて次のように語っている。
「それ(ポーポイズ現象)は、我々のドライバーには深刻な影響を与えていないよ」
■いつか大事故につながる可能性もあるとベッテル
それでも、FIA(F1統括団体である国際自動車連盟)はこの苦情を真剣に受け止めており、今後ドライバーたちだけでなく、全F1チームのテクニカルディレクターとも話をすることにしているようだ。
こうした中、レッドブル時代に4回F1王者となった実績を持つセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)は、オーストリアの『Servus TV(セアヴスTV)』に次のように語っている。
「どこかの時点で大きな事故が起こり、そこでみんなが立ち上がって、『僕たちはそのことについてFIAと話をした』と言うことになるだろう」
■メルセデスはスピードを犠牲にはしたくないとランド・ノリス
その一方で、1997年のF1チャンピオンであるジャック・ビルヌーブは、メルセデスが本当にポーポイズ現象を抑えたいのであれば、単に「マシンの車高を上げればいい」と語っている。
だが、マクラーレンのランド・ノリスは、メルセデスが車高を上げることはないだろうと次のように語った。
「メルセデスがマシンのスピードを犠牲にしたくはないのは明らかだよ」
グラウンドエフェクト効果を発揮するように設計されている2022年のF1マシンだが、車高を上げて路面とシャシーの間隔を開ければポーポイズ現象の発生は抑えることができる。だが、そうすればマシンが発生するダウンフォースも減り、コーナーをすばやく駆け抜けるようなことはできなくなってしまうのだ。