ミック・シューマッハと同じドイツ出身の元F1ドライバーであるクリスチャン・ダナーは、2年目のF1シーズンを迎えたミハエル・シューマッハの息子のF1キャリアが今後どのように展開していくのか心配しているようだ。
■マグヌッセンに勝たなくては意味がない
フェラーリの契約下にある現在23歳のシューマッハは、昨年ハースでF1デビューすると、チームメートであったロシア人ドライバーのニキータ・マゼピンを圧倒する結果を残している。
しかし、ダナーは、そのことには何の意味もないと考えているようだ。
「マゼピンより13倍、14倍、15倍、あるいは25倍速くても、それに何の意味があるんだ?」
『motorsport-magazin.com』にそう語ったダナーは次のように続けた。
「何もないよ」
「だが、マグヌッセンに勝ったら、それには意味がある」
■F1でまだ1ポイントも獲得できていないシューマッハ
ハースは当初2022年も昨年と同じシューマッハとマゼピンのコンビで戦う計画をしていた。だが、ロシアによるウクライナ侵攻が起こったことで、その制裁措置の一環としてシーズン開幕直前にマゼピンが解雇され、2020年までハースに所属していたケビン・マグヌッセンが急遽呼び戻されてシューマッハの新たなチームメートとなったという経緯がある。
だが、シューマッハは、2年ぶりにF1に戻ってきたマグヌッセンのペースについていくことができていない。5レースを終えた時点でマグヌッセンが15ポイントを稼いでランキング10番手に位置しているのに対し、シューマッハはいまだノーポイントでランキングも19番手にとどまっている。
実際のところ、デビューイヤーであった昨年もシューマッハはノーポイントで終わっており、F1に来てからまだ1ポイントも獲得することができていない。しかし、昨年のコンストラクターズランキングを最下位で終えたハースF1マシンにはまったくと言っていいほどに競争力がなかったものの、今年のマシンは格段にパフォーマンスが向上しているのは事実だ。
今年初開催された第5戦マイアミGPではシューマッハにもポイント獲得のチャンスがあったものの、友人でもある同じドイツ人ドライバーのセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)とクラッシュしてしまい、それをふいにしてしまっていた。
伝えられるところによれば、ハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーもこの件に関してはシューマッハに対する怒りをあらわにしていたようだ。
もしこのままシューマッハがマグヌッセンとの差を縮められず、ポイントを獲得できないレースが続くようなことになれば、当然ながら、F1シートを確保し続けることも難しくなるだろう。
■求められるのは長距離でのペースアップとミスを減らすこと
「彼(シューマッハ)にはペースはあると思う」
そう語ったダナーは次のように続けた。
「だが、これからはもっと長い距離でそれをやってみせる必要がある」
「私も彼が起こしたすべてのアクシデントに関する統計を見たよ。シュタイナーはこれで高額な請求書を作ることができるだろう。彼は多くの部品を壊してしまったんだ。それは認めざるをえない」
「我々にはミックのキャリアを心配する必要があるだろうか? 彼はF1で通用するのだろうか?」
■同世代ドライバーたちのレベルに追い付く必要がある
そう疑問を投げかけたダナーは、現時点では昨年のF1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を始め、ランド・ノリス(マクラーレン)やシャルル・ルクレール(フェラーリ)といった優秀な若手F1ドライバーが台頭してきているだけに、シューマッハも自分のレベルを早く引き上げる必要があると次のように続けている。
「問題は、ひとたびF1に来ると、実際のところ見習い期間はあっという間に終わってしまうということだ」
「ランド・ノリスも失敗したが、彼はすぐに信じられないほどよくなった」
「ルクレールも多くのミスを犯したが、それでもザウバーでドライブしたときには実績を残している。フェルスタッペンも同じだ」
1980年代にザクスピードやアロウズなどで合計36レースに出走した経験を持つ64歳のダナーはそう語ると、次のように付け加えた。
「この世代の新しいドライバーたちが設定しているハードルは非常に高いし、ミックもそこに達していかなくてはならないよ」。