2022年のF1は、今年から導入された新たなF1技術レギュレーションによってチームの力関係にも変化が生じているのは確かだ。
■予想もしなかったメルセデスの不調
まず、昨年まで8年連続でコンストラクターズタイトルを独占してきていたメルセデスの2022年型マシンの戦闘力が驚くほどに低く、現時点ではフェラーリやレッドブルとまともに戦うことはおろか、先週末にイモラで開催された第4戦エミリア・ロマーニャGPでは7度F1王者となった実績を持つルイス・ハミルトンが昨年のライバルであったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に周回遅れにされるという悲惨な状況に陥ってしまった。
■一躍チャンピオン候補に躍り出たフェラーリ
第2戦サウジアラビアGPではフェルスタッペンが接戦を制して今季初勝利をあげたものの、開幕戦バーレーンGPと第3戦オーストラリアGPではフェラーリのシャルル・ルクレールが圧勝。一方のフェルスタッペンはバーレーンとオーストラリアでマシントラブルによるリタイアとなり、3レースを終えた時点ではルクレールとフェルスタッペンの差は46ポイントにまで開いていた。
■イモラで反撃ののろしをあげたレッドブル
F1関係者やメディアの中には、今季はこのままフェラーリとルクレールが独走してしまうのではないかと予想する者も出てきたが、第4戦の舞台となったイモラ・サーキットでは序盤3レースではフェラーリに対して後れをとっていたレッドブルF1マシンのパフォーマンスと信頼性が向上し、フェルスタッペンとセルジオ・ペレスが1-2フィニッシュを達成。
このレースでルクレールが終盤に痛恨のスピンを犯して表彰台を逃したことから、フェルスタッペンとの差は一気に27ポイントにまで縮まってきており、今後もフェラーリとレッドブル、ルクレールとフェルスタッペンが熾烈なトップ争いを展開していくことになると予想されている。
■メルセデスに復調のチャンスは?
一方、現時点ではフェラーリ、レッドブルに次ぐコンストラクターズランキング3番手につけているメルセデスだが、すでにフェラーリとは47ポイント、レッドブルとも36ポイントの差がついている。そして、今後さらにその差が開いていく可能性すらある。
サイドポッドを極端に絞り込んだ非常に特徴的な形状のマシンを持ち込んでいるメルセデスだが、来週末に初開催を迎えるマイアミGP(5月8日決勝)で新たな改良パーツを投入することを明らかにしている。だが、最大の悩みとなっているポーポイズ現象(高速走行時にマシンが上下に大きく振動する現象)をそれによって克服できるかどうかはまだわからないというのが実情のようだ。
■さらに改善を推進するフェラーリ
もちろん、現在ランキングトップに位置しているフェラーリも立ち止まっているわけではない。
フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットはメルセデス同様「マイアミにはいくつかの新製品を持ち込む予定だ」と語っている。
ビノットによれば、フェラーリがマイアミに持ち込むパーツのうちメインのものは新しいリアウイングのようだ。だが、フェラーリは第6戦スペインGP(5月22日決勝)ではさらに多くの改良パーツを持ち込む用意を進めているという。
ビノットは次のように付け加えた。
「ほかのウイングでマシンを適切なダウンフォースレベルに適応させるつもりだ。しかし、ヨーロッパに戻ったらもっとたくさんの新しいアイテムがマシンに搭載されることになるよ」
■マイアミとバルセロナがシーズン前半を占うチェックポイントに?
実際のところ、来週末にマイアミGPが開催されるマイアミ・インターナショナル・オートドロームはどのチームにとっても初めて走るサーキットであり、ほぼ手探りの状態でレースに臨むことになる。そういう意味では、実際にシーズンを戦い続けていく上での指標としては、その2週間後にスペインGPの方が重要になると考えている者もいるようだ。
スペインGPの舞台となるバルセロナ・カタルーニャ・サーキットは近年プレシーズンテストの舞台となってきたおなじみのサーキットであり、今年も3日間ながら2月にテストが行われている。
初めて走るマイアミのサーキットにうまく対応でき、そして、なじみのあるバルセロナでマシンの熟成度をさらに向上することができたチームがその後のレースでも波に乗っていく可能性は高いと言えるだろう。
ともあれ、今後フェラーリが再びライバルを寄せ付けない強さを見せるのか? あるいはレッドブルがさらにフェラーリとの差を縮め、形勢を逆転していくのか? メルセデスとハミルトンがついに復調の兆しを示し、フェラーリやレッドブルとの三つ巴の戦いを展開できるようになるのか?
まずは来週末のマイアミ、そしてその次のバルセロナでその様相が垣間見えてくることになりそうだ。