先週末にテキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズで開催された今年のF1アメリカGPでこれまでには見られなかった演出が行われたことが大きな話題を呼んだ。
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■アメリカ風の演出が行われた今年のオースティン
今季からアメリカのリバティ・メディアがF1の新オーナーとなったこともあり、アメリカGP決勝前にはまるでアメリカが誇る伝統レースであるインディ500のように司会者から名前を呼ばれたドライバーが順番にコースに登場し、そこでアメリカ国歌が斉唱されるという演出が施されていた。
もちろん、こうした形式はこれまでのF1では行われたことがないものだが、これに関してはF1関係者の間にも賛否両論があるようだ。
■ドライバーたちの反応は?
楽しいことが大好きだというキャラクターで知られる元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは、今回のアメリカGPでの演出に関しては「僕の好みではないね」とコメント。
今年のインディ500に出走し、インディアナポリスでこうした形式のレース前イベントを経験していたフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)は、今回F1がやったのは単なる「物まね」に過ぎないと語っている。
だが、今年通算4回目のF1タイトル獲得がほぼ確実なものとなっているルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)は今回のやり方を大歓迎しているようだ。
「本当にすごかったよ」
2007年にF1デビューを果たし、今年で11年目を迎えているハミルトンはドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』にそう語ると、次のように付け加えた。
「これまでの10年間は退屈だったけれど、今回はまるでスーパーボウルみたいだったよ」
■レース前の集中の妨げに?
通常はレース開始30分前にオープンされるピットレーンだが、今回はこうした演出を行うために15分前倒しでオープンされるという異例の対応が取られていた。そして普段はグリッド上でマシンに乗り込む前に最後の精神統一をしたり、リラックスするように努めたりしているドライバーたちも、アメリカでは人工的なスモークが吐きだされるトンネルを抜けてコースに出るためにそこで待機させられることになっていた。
レッドブル時代に4年連続でF1チャンピオンになったという実績を持つセバスチャン・ベッテルは、アメリカGPでのレース前の演出について次のように語った。
「こういうことが好きな人たちにとってはよかったんだろうね。僕には、これは必要ないな。僕は芸人ではないからね」
「僕はクルマに乗り込んで走りたいんだ」
ベッテルのチームメートである38歳のキミ・ライコネンもあまりこういう演出は好きではないようだ。
「僕がどちらを好むかは誰でも知っているよ。でも、適切な場所で行われて適切な時間で終わるのであれば、僕は気にしないけれどね」
■オーストリアGPではこれを参考にしたいとレッドブル首脳
一方、レッドブル首脳の1人であるヘルムート・マルコは、今回の演出は「素晴らしいショー」だったと歓迎のコメントを行っている。
「もちろん、今回のはアメリカ風だったけれど、シュピールベルク(レッドブルが所有するレッドブルリンク)にいる我々のスタッフたちは間違いなくオーストリアでのレースに向けていくつかのアイデアを検討することになるだろうね」
また、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは次のように語っている。
「毎回ああいうショーをやる必要はないが、やる価値があるところでやる分には私は気にしないよ」
「シルバーストン(イギリス)ではあれはうけないだろうね。だけど、何も変えない方がいいと言うのも間違いだろうと思うよ。新たなファンをつかみたいと思うのであれば、新しい方法を考える必要もあるからね」
■チームがF1の方向性を理解し始めたとロス・ブラウン
かつてフェラーリの技術責任者を務め、2009年には自らのチームでF1タイトルを獲得したロス・ブラウンは、現在は新F1オーナーの指名を受けてF1モータースポーツ責任者という地位についている。
そのブラウンは今回のアメリカGPについて次のように語った。
「私はオースティンの週末に行われたことを誇らしく思うよ」
「我々は少しずつショーを改善していこうとしている。そして、すべての場所でやるつもりはないものの、日曜日に我々がやったことはうまくいったよ」
そう述べたブラウンは、次のように付け加えた。
「だが、特にうれしかったことは、F1に関して我々がどういう方向に向かおうとしているかをチームたちが理解し始めているということだよ」
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