23日(日)に行われたF1ベルギーGP決勝で、1回ピットストップ作戦を敢行したセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)。その作戦が功を奏して3位表彰台をほぼ手中に収めたかに思われたベッテルだったが、レースが残り2周に入ったところで右リアタイヤが破裂。ベッテルは一転ノーポイントに終わってしまうというハプニングがあった。
【結果】F1ベルギーGP決勝の順位、タイム差、周回数、獲得ポイント
■ピレリへの怒り収まらぬベッテル
この結果、ランキングトップのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)とのポイント差が67ポイントにまで広がったベッテルだが、その怒りは当然ながら、タイヤサプライヤーであるピレリに向けられた
今年のスパ・フランコルシャンでピレリタイヤが走行中に破裂したのは、ベッテルのケースが初めてではなかった。金曜日に行われたフリー走行2回目では、メルセデスAMGのニコ・ロズベルグの右リアタイヤが同じように破裂していたのだ。
ベッテルはレース後、メディアを通じてピレリに対する批判を繰り広げたが、その後パドックでピレリのモータースポーツ責任者であるポール・ヘンベリーを捕まえ、直接苦情を述べたようだと伝えられている。
その際、ベッテルがヘンベリーにどう語ったのかについては、メディアによって伝えられている内容に違いが見られるようだ。だが、ドイツの『Bild(ビルト)』紙は、ベッテルはヘンベリーに対し、「あなた方のタイヤはものすごく危険だ」と伝えたと報じている。
■フェラーリは許容を超えていたとピレリが反論
ピレリはそうした動きに対して公式声明を発表。その中で、2013年にピレリが行った“ひとつのタイヤセットに対して最大周回数制限を設けたい”との申し出をF1チームたちが拒絶していたのだとし、次のように反論を展開している。
「そうした条件が今日のスパで適用されていたとすれば、ミディアムコンパウンドにおいては最大22週までという制限が行われていただろう」
さらに、ヘンベリーはメディアに対して次のように語ったと伝えられている。
「セバスチャンが憤るのは理解できるよ。だが、フェラーリはリスクをとり、それが成功しなかったということなんだ」
■ピレリから事前に警告はなかったとフェラーリ
しかし、フェラーリのチーム代表であるマウリツィオ・アリバベーネは、ベッテルの1回ストップ作戦はかなり「攻撃的」なものだったと認めつつも、不当にリスクの高い作戦ではなかったと次のように主張した。
「我々のところにもピレリからきたエンジニアがいるんだ。彼は何のために来ていると思う?」
「彼はただガムをかむためだけにここにいるわけじゃなく、すべての走行状態をチェックするためにいるんだ。だが、我々は(彼から)何の警告も受けていなかった。証拠を示したっていいんだよ」
■フェラーリの自業自得だとメルセデスAMG
一方、メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフは、ベッテルがあまりに強くピレリを批判していることに対して、それは行き過ぎだと考えているようだ。
「フェラーリがああいう作戦をとったことは理解できるし、結果的にベッテルが不機嫌となったこともね。だが、私としてはピレリを擁護すべきだろうね」
そう語ったヴォルフは、次のように続けた。
「あれは、リスクを承知でフェラーリが下した判断だった。我々は、金曜日にパンクが起こったことを受け、3回ストップさえ考えていたほどだよ」
現在、メルセデスAMGの非常勤会長を務める伝説的元F1ドライバーのニキ・ラウダも次のように続けた。
「リスクのある戦略が失敗したからといってフェラーリが文句を言うべきではないね。ベッテルがタイヤパートナーに対して行った発言は正しいことではないし、もしうちのドライバーがそんなことを言ったとしたら、私は許さなかっただろう」
元F1ドライバーであり、現在はドイツのテレビ局でF1解説者を務めるクリスチャン・ダナーは、このラウダの発言に関して次のように語った。
「基本的に、ニキは100%正しいよ」
「こういうことはモータースポーツではよくあることなんだ。限界を狙えば、それが自分にとってまずい結果を生むことだってあるんだ」
■不安を訴えるロズベルグ
だが、金曜日に時速300kmで走行中に右リアタイヤの破裂を経験していたロズベルグは、チーム代表たちとは少しニュアンスの違うコメントを発している。ロズベルグのタイヤ破裂に関しては、その原因が特定できていないというのが現状だ。
「いずれにしても、もっと安全策を講じる必要がある」
そう語ったロズベルグは、次のように付け加えた。
「再び高速サーキットのモンツァでのレース(イタリアGP)を2週間後に控えながら、もし彼ら(ピレリ)がこの問題を解決することができないとしたら、その後何か適切な対応をすることが必要になるだろうね」
ベッテルのタイヤ破裂によりロマン・グロージャンが今季初めて3位表彰台に上った。そのグロージャンが所属するロータスでエンジニアを務めるアラン・パーメインも、ピレリに対する疑念を表している。パーメインは『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「もしピレリが、自分たちのタイヤは40周もつと言うのであれば、28周程度で壊れてしまっては困るよ」
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