F1中国GPの初日フリー走行セッションを終えたドライバーたちは、みんな同じ単語を口にしていた。それは、「タイヤ」だ。
「これまで経験した中では最悪のタイヤだったよ」
そう語ったメルセデスAMGのルイス・ハミルトンは、この状況を「絶望的」と表現し、次のように続けた。
「あらゆるところにタイヤかすが飛び散っていた。全然長持ちしないんだ」
ハミルトンが言っているのは、今回中国GPに持ち込まれた2種類のタイヤのうち、軟らかいほうのソフトタイヤのことだ。装着したとたんにすぐにスピードが出るそのタイヤは、かつての懐かしい「予選専用タイヤ」にたとえられている。
「このサーキットに合うタイヤだとは思えない」と続けたハミルトンは、次のように付け加えた。
「2、3周したら、もう崩れてしまったよ」
マクラーレンのジェンソン・バトンも同意見のようだ。
「すごく難しいタイヤだし、レースでは速く走っているところをそれほど多くは見られないと思うよ」
「ものすごく性能低下が激しい。予選では(1分)35秒台が出せる性能があるけど、レースでは8周もすれば48秒台くらいにまで落ち込むよ。それじゃGP2(F1の下位カテゴリー)より遅くなってしまう」とバトン。
レッドブルのマーク・ウェバーも、ソフトタイヤはセットアップでいいバランスにすることは「実質的に不可能」だとし、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』へ次のように語った。
「まるでフォーミュラ・フォード(※)を運転しているみたいに、ずるずると滑りながら走らなきゃいけないんだ」
だが、必ずしも全員が不満に思っているわけでもない。ロータスとフェラーリはそのソフトタイヤに満足しているように見え、とりわけフェリペ・マッサ(フェラーリ)はそうだ。マッサのエンジニアは無線を通じてマッサのペースに関して、「良くはないけれど、素晴らしい」と伝えていた。
レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーも、「今日のフェリペ・マッサは確かに速かったね」と認めている。
(※)フォーミュラカーのエントリーカテゴリーのひとつ。クルマにダウンフォースを与えるための空力パーツを装着することが認められていないため、グリップがそれほど高くない。