ピレリタイヤに対する批判が多く聞かれる中、元F1ドライバーでテレビの解説も務めるマーティン・ブランドルは、ピレリを擁護している。
シーズン前の冬季テストと開幕2戦を終えて、数え切れないほどのドライバーと、レッドブルやメルセデスAMGといったトップチームが、タイヤに対する不満を声高に唱えている。今年のタイヤはあっという間に摩耗してしまい、レースに対する影響が過度で人工的すぎるというのだ。
マーク・ウェバー(レッドブル)は、“ショー”としての要素と競争のバランスが大事だと見ている。
「中立の立場にはいいんだろうね。ファンにもいいし、F1を見始めた人たちにもたぶんいいんだろう」とウェバーは話している。
「だけど、以前からのファン、このスポーツをしっかり把握し、過去についても学んでいるような人たちにとっては、ちょっと当たり外れがあるように見えるだろう」
ウェバーの不満は、F1ドライバーが全力で走るというより、タイヤ温存のプロになってしまっていることにある。
「(テニスの)ラファエル・ナダルとロジャー・フェデラーの試合を見てよ。ラインぎりぎりのプレー、正確無比なプレーが5セットも続く。それを見て楽しむことができる」
「でも今僕たちは、85%とか80%の力で走っている。レースは、クルマを限界で走らせるというより、とにかくタイヤをいたわって、最後まで保たせるようにすることだけになっているんだ。本当に限界まで追い込んでいる姿を見ることはないね」
「ちょっと不満をぶちまけてみた」とウェバーは締めくくっている。
こうした批判に対してピレリは、不満はタイヤによるものというより状況によるものだとしている。
一方、ブランドルはこう語ったと『Speedweek(スピードウィーク)』が伝えた。「彼ら(ピレリ)は、求められたことをしているだけだ。それは、レースをエキサイティングなものにすることだ」
「次のグランプリに硬いタイヤを作ってくることは容易にできるだろう。だが、われわれは、本当にそれを望んでいるのかな?」
「バランスが良くなければね。ピットストップ1回の退屈なレースなんて誰も見たいとは、思わないだろう。逆に、ピットストップ5回では、ばかばかしい」
「2回から3回までがちょうどいい妥協点だと思う」
「満足していないドライバーがいるのも分かる。(ファンは)一番速いドライバーが勝つのを見たいからね。タイヤ温存が一番うまいドライバーではなくてね」
「ジレンマだよ。前面に出るべきなのは、スポーツとしての側面か、それともエンターテインメントとしての価値なのか。忘れてはならないのは、後者がなければ前者も存在しないということだ」
こうした批判や、チャンピオンチームであるレッドブルのような影響力のあるチームからのプレッシャーを受けて、ピレリは、第4戦のバーレーンGP(4月21日決勝)後に、状況を「再検討」するかもしれない。
いずれにしても、ピレリはF1最高責任者バーニー・エクレストンから支持を受けている。
「今のレースがいいか、それとも、誰も追い抜きをせず、スタート前から誰が勝つのか相当の確率で分かっていた時代のほうがいいか、どちらだね?」というエクレストンの言葉をブラジルの『O Estado de S.Paulo(オ・エスタード・ジ・サンパウロ)』が伝えている。