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「ハロ」の効果は再確認されたが「やるべき安全対策はまだたくさんある」とF1ドライバー

2022年07月05日(火)23:58 pm

波乱の展開となった2022年F1第10戦イギリスGP決勝ではカルロス・サインツ(フェラーリ)のF1初優勝に注目が集まったものの、その一方で、もうひとつ非常に大きな話題となったのが2018年からF1マシンに装着することが義務づけられているコックピット保護システムのハロの効果のことだ。

■ハロに救われた周冠宇

イギリスGP決勝ではスタート直後にほかのマシンにぶつけられた周冠宇(アルファロメオ)のマシンがひっくり返り、そのままコース上からグラベルを突っ切ってしまった。周のマシンはバリアの手前でバウンドすると、バリア上部にぶつかってフェンスに激突。そのままバリアとフェンスにはさまれる形となってしまった。

国際映像でもしばらくの間そのアクシデントの映像や、懸命に進められていた周の救出作業の映像を流すことがなかったために、状況はかなり悪いのではないかとの憶測さえ流れた。

だが、あれほどの大事故だったにもかかわらず、周が何一つけがを負っていなかったことから、現在のF1マシンの安全性が改めて確認されるという不幸中の幸いとも言うべき結果に終わっている。

周はその後、ハロによって「救われた」と語ったが、まさにこのシステムがなかったら違う結末を迎えていた可能性も十分に考えられる事故だった。

実際のところ、今年のイギリスGPの舞台となったシルバーストンでは、ハロの重要性がクローズアップされるアクシデントがもうひとつ発生していた。

■同時開催のF2レースでも証明されたハロの効果

F1の決勝に先駆けて行われたF2選手権のフィーチャー・レースにおいて、コースオフしたデニス・ハウガーのマシンがウィリアムズのテストドライバーでもあるロイ・ニッサニーのマシンに乗り上げるような形で激突。ちょうどハウガーのマシンの右フロントタイヤがニッサニーの頭部をめがけてぶつかる形となっており、ハロがなければこちらも重大な事故となっていた可能性があった。

また、2020年のF1第15戦バーレーンGP決勝においても、当時ハースに所属していたロマン・グロージャンが高速でガードレールに突っ込むアクシデントが発生。グロージャンは真っ二つに引き裂かれ、炎をあげたマシンから奇跡的な生還を果たしたが、これもハロの重要性が証明された事故だったと言える。

導入時には賛否両論があったハロだが、こうしたアクシデントで実際にドライバーの生命が守られてきたことで、現在ではその存在に異論を唱える者はほとんどいなくなっている。

■対策が必要なことはまだあるとラッセル

だが、今回の周のアクシデントを招いた張本人のひとりでもあるジョージ・ラッセル(メルセデス)は、モータースポーツの安全問題にはまだ改善すべき点も残されていると指摘している。

先週末のシルバーストンで周のマシンとぶつかり、自身もそこでリタイアとなった24歳のラッセルだが、事故後すぐに自分のマシンを降りると、周の様子を確認するためにバリアの方へ向かって走り始めた様子が国際映像でも紹介されていた。

「彼が大丈夫かどうか見に行ったんだ」

そう語ったラッセルは次のように続けた。

「彼はあそこに閉じ込められていて、何もすることができなかった」

「どうすれば、あんなに狭いところにクルマがはまってドライバーが出られなくなるようなことを防ぐことができるのかを考える必要があると思うよ」

今回は幸いにもグロージャンのアクシデントのようにマシンが火災を起こすことはなかった。だが、もしも今回のようなアクシデントが発生し、マシンが火に包まれるようなことがあれば、どういう結末を迎えることになるのかは想像もしたくないことだ。

確かに、近年のF1マシンの安全性が非常に向上しているのは事実だが、ラッセルが言うように、サーキットや関連施設などの安全対策など、F1や統括団体であるFIA(国際自動車連盟)にはやるべきことがまだ多く残されているのは間違いないだろう。

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