先週末にシルバーストン・サーキットで行われた2022年F1第10戦イギリスGP決勝後に、フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットがシャルル・ルクレールに対して「だめだ」とでも言うように指を立てて横に振る仕草をしたところが目撃されていた。
■フェラーリのタイヤ戦略で勝利を逃したルクレール
52周で行われたイギリスGP決勝で34周目にトップに立ったモナコ人ドライバーのルクレールは、その時点では25周目に交換したハードタイヤでそのまま最後まで走りきって今季の3勝目を手にする可能性がかなり高いと考えられていた。
ところが、エステバン・オコン(アルピーヌ)のマシンがメインストレートで止まってしまったことから39周目にセーフティカーが導入される。すると、フェラーリはルクレールはピットに呼び戻さず、後ろを走っていたカルロス・サインツだけをピットインさせてハードタイヤからソフトタイヤに交換。そして、その時点で上位を走行していたルイス・ハミルトン(メルセデス)やセルジオ・ペレス(レッドブル)も同じ戦略をとってソフトタイヤに交換した。
結局、ハードタイヤのままで走行することを強いられたルクレールは、レース再開後にサインツばかりかハミルトンとペレスにもコース上でオーバーテイクされてしまい、表彰台圏外の4位でレースを終えることになってしまった。
■あれは「激励」の意味だったとルクレールとビノット
レース後、ルクレールが自分の優勝のチャンスをふいにしてしまったフェラーリの戦略に対して激怒していたのは明らかだった。そして、そのルクレールがメディアのインタビューに向かう前に、ビノットが指を立てて横に振る仕草をしていたのだ。
これはビノットが、明らかにチームの判断に対する不満を表していたルクレールを叱責したのだと受け止めたメディア関係者も多かったようだ。
だが、ルクレールはそれについて質問されると次のように答えている。
「彼(ビノット)は僕を元気づけたかったんだ。それだけだよ」
また、ビノットも、「内部で解決する必要があることは何もなかった」と主張し、次のように付け加えた。
「あれはただ、『がっかりしているのはわかる。だが、君の今日のレースは素晴らしかった』と伝えただけだよ。ハッピーでいることは難しいだろうが、落ち着いてポジティブでいることが重要なんだ」
■自分の失望を隠すことはできないとルクレール
ルクレールも次のように続けたが、複雑な気持ちであることは間違いないようだ。
「物事全体に目を向けていかなくてはならないだろうね」
「僕に関しては、話すことができるのはレースについてだけだし、あまりにもタイムを失いすぎたと感じているよ。でも、それは僕の意見に過ぎないけれどね」
「いずれにせよ、僕は自分の残念なパフォーマンスばかりに注目が集まって欲しくないんだ。今日は僕のチームメート(サインツ)がF1初優勝を果たした特別な日だからね」
「だけど、僕は自分の失望を隠すことはできないよ」
■フェルスタッペンの大量リードは変わらず
しかし、現在ランキングトップに立っているマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がマシントラブルを抱えて失速しただけに、ルクレールにとってこのレースは勝たなくてはならないものだったのも確かだ。イギリスGP前には49ポイントに開いていた差を大きく縮めるチャンスがあったからだ。
結局、ルクレールが4位、フェルスタッペンが7位でシルバーストンでのレースを終えたことから、両者の差は少し縮まりはしたものの、現時点でも43ポイント差となっている。
もし、自分が優勝していれば30ポイントまで差を縮めることができていただけに、ルクレールとしても自分だけをハードタイヤのままで走らせたフェラーリの戦略判断に苦言を呈したくなるのも無理はないことかもしれない。