昨年限りでメルセデスとの契約が切れたルイス・ハミルトンだが、通算7回のF1チャンピオンとなったドライバーが現時点ではどのチームに所属していないという奇妙な状況が続いている。
メルセデスとハミルトンの新契約締結に向けた交渉がなかなか合意に達しないのは報酬問題がネックになっているためだと考えられている。
最近のうわさによれば、ハミルトンは年俸4000万ユーロ(約50億円)で4年契約を結ぶことに加えていくつかボーナス的要素の追加も求めていると言われている。
だが、『Autosprint(オートスプリント)』によれば、メルセデスでは年俸3500万ユーロ(約44億円)で1年契約という条件をハミルトンに対して提示しているだけだという。
さらに、もうひとつ交渉のネックになっているのは、ハミルトンが2022年以降の自分のチームメートに関する選択権を望んでいることだとも考えられているようだ。
「ハミルトンが2022年以降のセカンドドライバー選択に積極的役割を果たしたいと望んでいるとしても、それは驚くには当たらないだろう」
そう報じた『Autosprint(オートスプリント)』は、ハミルトンにそうした思いを強く抱かせたのは、新型コロナウイルス感染によりハミルトンが欠場した2020年F1第16戦サヒールGPでジョージ・ラッセルが素晴らしいパフォーマンスを示したことがきっかけだったと指摘している。
ラッセルはメルセデスの契約下にあるものの現在はレンタル移籍のような形でウィリアムズに所属している。そのラッセルはサヒールGPの舞台となったバーレーン・インターナショナル・サーキットで予選こそバルテリ・ボッタスに僅差で敗れて2番手だったものの、決勝ではそのボッタスをオーバーテイクし、チームのピット作業ミスが起きるレース終盤まで優勝間違いないと思わせる走りを見せていた。
『Autosprint(オートスプリント)』は、このラッセルの活躍がハミルトンの計画を狂わせてしまったのだと考えているようだ。
「ラッセルはバルテリ・ボッタスとは違い、ジュニアクラスにおいても非常に簡単にたびたび勝利することができることを示していた」
そう書いた『Autosprint(オートスプリント)』は次のように付け加えている。
「彼のパフォーマンスにはメルセデス首脳陣も注目せざるをえなかった」
ともあれ、最終的には2021年シーズンが開幕するまでにメルセデスとハミルトンの交渉が妥結に至る可能性は極めて高いと考えられている。
しかし、『Autosprint(オートスプリント)』は36歳のハミルトンが2021年シーズンを最後にF1を引退する可能性も除外できないとし、その場合2022年にはメルセデスでマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とラッセルがコンビを組むチャンスもあるだろうと予想している。
いずれにせよ、今後メルセデスとハミルトンの交渉がどのように進展していくのかにさらに注目が集まることになりそうだが、イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』は次のように書いている。
「2週間前に切れたハミルトンとメルセデスの契約更新のための交渉はチェスのゲームのようになってしまった」