1970年代に活躍したドイツ出身元F1ドライバーのハンス-ヨアヒム・シュトゥックが、新型コロナウイルスの大きな影響を受けている今、全てのことを再考すべきだと主張した。
いまだにシーズン開幕のめどが立たないF1だが、チームの負担軽減などを目的として2021年に予定されていた新技術レギュレーションの導入を2022年に1年延期することがすでに決まっている。
そして、最新情報によれば、F1チームたちはそれを2023年にまで遅らせることも検討し始めているようだ。
そればかりではない。FIA(国際自動車連盟)の下部組織である世界モータースポーツ評議会は、FIA会長のジャン・トッドに対し、今回の新型コロナウイルス危機を乗り切るためであればどのような決断を行ってもかまわないという「全権委任」を行ったことが明らかとなっている。
こうした状況を受け、F1が過去最大の危機を迎えていると思うかと尋ねられた前F1最高責任者のバーニー・エクレストンは「その通りだ」と答えている。
最近までドイツモータースポーツ連盟(DMSB)の代表を務めていた69歳のシュトゥックは、現在の状況はF1にとって「全てを再考」するチャンスだと『Kolner Express(ケルナー・エクスプレス)』に次のように語った。
「F1は本当に22レースも必要なのだろうか? あるいは10レースで十分なのだろうか? そうではなく、DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)のようにひとつの週末で2レースを行う方がいいのか? あるいは、フォーミュラEがやっているように秋から春まで年をまたいで選手権を行うべきなのだろうか?」
「だが、まずはこの危機を乗り越えなくてはならないし、自動車産業におけるスポンサーたちにどれほどの回復力があるかを確かめる必要がある。小規模チームが生き残れるかどうかもね」
一方、シュトゥックは同じドイツ出身の後輩ドライバーであるセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)の将来についても質問されている。これは、最近、今年で契約が切れるベッテルに対し、フェラーリが大幅にダウンする報酬で2021年だけの単年契約という条件でオファーを出したと伝えられたことに関連してのものだ。
「名声を得たレーシングドライバーなら誰でも、彼(ベッテル)と(シャルル)ルクレールとの間に昨年起きたことを経験しているよ」
そう答えたシュトゥックは次のように付け加えた。
「だが、もし新しいフェラーリ(F1マシン)が彼に合っていれば、私は彼には何でもできるはずだと信じているよ」
しかし、うわさでは、ベッテルがその条件をのむのは難しいのではないかと考えられており、フェラーリはベッテルの後任としてカルロス・サインツ(マクラーレン)やダニエル・リカルド(ルノー)の獲得を考えているようだとも言われている。
「もしフェラーリがもう彼(ベッテル)を必要としないというのであれば、喜んで彼を迎え入れたいと思う者たちもいるよ。例えば、マクラーレンのアンドレアス・ザイドル(チーム代表)とかね」
そう語り、ドイツ出身のザイドルとベッテルは一緒にうまくやれるはずだと示唆したシュトゥックは次のように付け加えた。
「だが、彼(ベッテル)は自分が再び新しいことを始めたいと思うのかどうかをよく考える必要がある。それは重大な判断だからね」