夏休み前最後のレースとなった今季のF1第12戦ハンガリーGPが行われる前、レッドブル首脳のヘルムート・マルコが夏休み明けの第13戦ベルギーGP(9月1日決勝)もしくは第14戦イタリアGP(9月8日決勝)でホンダが新スペックエンジンを投入することになると示唆していた。
だが、実際のところ、どのレースでスペック4と呼ばれる新バージョンエンジンを投入するのかはまた確定していないようだ。
2014年に導入されたPU(パワーユニット)と呼ばれる現行F1エンジンには年間の使用数に制限が設けられている。
今季のF1は年間21戦で戦われており、シーズンを通じて使用できるPUコンポーネントはICE(内燃機関)、TC(ターボ)、MGU-H(熱エネルギー回生システム)がそれぞれ3基まで、MGU-K(運動エネルギー回生システム)、ES(バッテリー)、CE(電子制御システム)がそれぞれ2基までに制限されている。
その年間許容数を超えるコンポーネントを投入すれば、それに応じたグリッド降格ペナルティーが科されることになるわけだが、レッドブル・ホンダの2台は現時点ですでに全てのコンポーネントが年間許容数に達しており、今後新スペックを投入すればその時点でグリッド降格ペナルティーを受けることになる。
ホンダF1プロジェクトにおいてテクニカルディレクターを務める田辺豊治は、新スペックエンジン投入に関し、『motorsport.com』に次のように語った。
「我々は常にチームと話し合いをしていますし、それによっていつ新しいエンジンあるいは改良版を投入するかを決めることになります」
「現時点ではまだ何も決定してはいません。状況やタイミング、そしてチームとの話し合いの結果によってきます。非常に難しいんです」
実際のところ、夏休みが明けると第13戦ベルギーGPと第14戦イタリアGPが2週連続開催となり、1週間の間隔をへて第15戦シンガポールGP(9月22日決勝)と第16戦ロシアGP(9月29日決勝)がまた連続開催となるスケジュールとなっており、どのレースで新スペックエンジンを投入するのが残りのシーズンを戦う上でベストな選択であるかを判断するのがかなり難しいことであるのは確かだ。
さらに、もしベルギーかイタリアで新スペックエンジンを投入すれば、ホンダのホームレースとなる第17戦日本GP(10月13日決勝)にはすでにかなりの距離を走ったエンジンで臨まなくてはならなくなる。
もし日本GPにベストな形で臨みたいと考えるならば、シンガポールが新スペックエンジン投入に最善のタイミングとなりそうだ。だが、シンガポールGPの舞台となるマリーナ・ベイ・ストリート・サーキットはレッドブルのF1マシンにとって相性のよいサーキットだと考えられているだけに、ここでグリッド降格を受けるのは避けたいところだ。
レッドブル・ホンダとしてはマックス・フェルスタッペンが直近4レースで2勝、1ポールポジション獲得と調子が上がってきているだけに、シーズン後半に複数回のグリッド降格ペナルティーを受けるのはできるだけ避けたいところだろう。
そう考えれば、レッドブル・ホンダにとって新スペックエンジン投入のベストタイミングは第16戦ロシアGPということになるかもしれない。
「我々は2種類の計画をしているんです。長期的なものと短期的なものです」
「レース後に状況やPUのコンディションをレビューしますが、2レースか3レースが短期ということになります。そして長期というのはシーズンの最後までということになるでしょう」
そう語った田辺は次のように繰り返した。
「すごく難しいですね」