今年ザウバーとテストドライバー契約を結んだコロンビア出身女性ドライバーのタチアナ・カルデロンが、女性でも男性ドライバーに交じってF1を戦うことはできると主張した。
■女性がF1を戦うのは無理がある?
先週、FIA(国際自動車連盟)の「女性モータースポーツ委員会(women in motor sport commission)」メンバーであるスペイン出身女性ドライバーのカルメン・ホルダが、女性はF1を目指すよりは、より身体的負担の少ないフォーミュラEで戦うことを目指した方がよいと発言したことが大きな波紋を呼ぶことになった。
ホルダは以前にも、当時F1最高責任者を務めていたバーニー・エクレストンが、女性だけのF1シリーズを発足させた方がよいと発言した際に、それに賛同するコメントを行っていたことでも知られている。
世界の多くのスポーツでは男性と女性が同一のカテゴリーで戦うものは少なく、ほとんどの競技が男女別に争われることになっている。エクレストンやホルダはモータースポーツも同様に筋力的に男性と女性がそれぞれ別のカテゴリーで戦う方が好ましいだろうという意見だ。
■男性との筋力差は克服できるとカルデロン
だが、昨年ザウバーの開発担当ドライバーとなり、今年はテストドライバーに昇格した24歳のカルデロンは違う考えを持っているようだ。
スペインの『El Mundo Deportivo(ムンド・デポルティーボ)』からホルダのコメントについてどう思うかと質問されたカルデロンは次のように答えた。
「実際のところ、私は一度もフォーミュラEのクルマを運転したことがないので、それが運転しやすいのか難しいのかは分かりません」
「ですが、私個人としては身体的な障壁があるとは感じていません。もちろん、女性と男性は違いますし、女性の方が筋肉の量が少し少ないのは確かですけれどね。でも私はそれを埋め合わせようと懸命にトレーニングをしてきました」
「スージー・ヴォルフはすでに身体的障壁などないということを示しましたし、私も女性が同じように戦えることを示すことができるようになりたいと思っています」
■男女別のF1は不要
メルセデスのモータースポーツ責任者トト・ヴォルフの妻であり、2016年までウィリアムズのテストドライバーを務めていたスージー・ヴォルフを引き合いに出してそう述べたカルデロンは、自分はエクレストンやホルダのように女性だけのF1シリーズを立ち上げるというアイデアには反対だと次のように付け加えた。
「私が次にF1で戦う女性になりたいと思っています。身体的な制約などありませんし、私には女性だけの選手権など本当に必要ありません。私は女性でも本当にいい仕事ができると思っています」
■女性進出が難しいF1
とはいえ、現実的な観点から見れば、女性がF1で戦うのは非常に難しいのは確かだろう。事実、これまでにF1で戦った女性は数名しかおらず、その多くが予選突破できずに決勝で戦うことすらできずに終わっている。
女性ドライバーとしてF1決勝を走ったことがあるのは1958年にF1史上初の女性ドライバーとなったマリア・テレーザ・デ・フィリッピス(イタリア)と、1975年のスペインGPでF1史上唯一女性として6位入賞しポイントを獲得したレラ・ロンバルディ(イタリア)の2人だけとなっている。
その後やはりイタリアのジョバンナ・アマティが1992年の開幕戦から第3戦までにエントリーするが、いずれも予選を突破できずに終わっており、それ以降F1にエントリーした女性ドライバーは出ていない。