F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は28日(木)、これまでかなり厳格に運用してきたF1チームとドライバー間の無線通信内容制限ルールを見直し、大幅に緩和することを明らかにした。
現在のF1ルールでは、ドライバーは自分自身でF1カーを運転しなければならないとされており、運転にあたって補助を受けてはならないと定められている。
近年はテクノロジーの高度化により、走行中にチームから無線でドライバーに技術的な指導を行うことが増えていたが、これがルールに抵触するとともに、テレビ視聴者などにドライバーが補助を受けなければF1カーをうまく走らせることができないというイメージを与えることが懸念されるとして、ここ数年段階的に無線通信内容が大きく制限されてきていた。
しかし、今季の第10戦イギリスGPでは2番手を走行していたニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)がレース中にギアボックスの不調を訴え、チームがその対処法を無線で連絡。これによりロズベルグはレース後に10秒加算ペナルティーを受けて正式順位が3位に後退するという事態が発生。
さらに、第11戦ハンガリーGPでは、クルマのブレーキシステムに不調を訴えたジェンソン・バトン(マクラーレン)に、同様に対処法が無線を通じて伝えられたとして、バトンはレース中にピットスルーペナルティーを受けていた。
特にバトンのトラブルに関しては、早急に何らかの対応をしなければ事故につながるリスクもあったとされ、こうした場合の無線通信にペナルティーが科されるのは本末転倒ではないかとの意見も出ていた。
28日にFIAやF1最高責任者のバーニー・エクレストン、そして主要チーム代表によって組織されたF1意思決定機関であるストラテジー・グループの会合が行われたが、そこでチームやエクレストン側からこのルールの見直しが提案され、FIAもこれに応じることになったもの。
今後は、フォーメーションラップが開始されてから決勝レースがスタートするまでの間を除き、チームとドライバーは一切の制限なく自由に通信(無線ばかりでなくサインボードによるものも含む)ができることになる。
FIAでは、今回のルール変更により、逆にテレビ視聴者やサーキットに訪れた観客にチームとドライバーの通信内容を提供することでレースの楽しみを増加させることもつなげたいと考えており、今後F1チームはクルマがガレージ外にある時点においては、すべてのチームとドライバーの無線通信をエクレストン率いるF1商業権管理会社であるFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)に公開しなければならなくなる。