元F1ドライバーのジャック・ビルヌーブが、F1はかつての栄光とともに「信頼」を取り戻すことが必要だと主張した。
■繰り広げられるドタバタ政治劇
F1人気減少が叫ばれる中、F1では2017年からルールを改正し、1周あたり数秒今よりもタイムを縮めることを目指している。だが、F1に参戦している自動車メーカーやチームのさまざまな思惑が絡み合う中、実際にどういう成果となって現れるのかはまだ明確に見えてきていない状況だ。
そんな中、F1にショー的要素を盛り込もうと、今季の開幕戦から急きょ新たな予選方式が採用された。だが、逆に見どころに欠ける予選となったことで、F1チーム首脳たちは次戦F1バーレーンGP(4月3日決勝)から以前の方式に戻すことに合意したと報じられていた。
そしてそれとタイミングを合わせたように、F1ドライバーたちによる任意団体であるGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)が、現在のF1運営体制に疑問を投げかける公開状を出し、“F1ドライバーの反乱”としてメディアにも取り上げられる状態となっている。
結局、F1委員会で予選ルール変更の決定が承認されなかったことで、今週末のバーレーンGPでも不評だった新方式で予選が行われることが決定したが、これに関してはファンの存在を無視したやり方だとの批判もある。
■F1では全員一致などありえないとニキ・ラウダ
かつて3度F1王座についた伝説的元F1ドライバーであり、現在はメルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダは、イタリアの『Sky Sports News HD(スカイ・スポーツ・ニュースHD)』に次のように語った。
「私もドライバーたちと同じ意見だよ」
「今のF1で行われていることはよろしくない」
「誰もが自分の立場を守ろうとし、それぞれがお互いに相手の意見を阻止しようとしている。だから合意などできるわけがないよ」
伝えられるところによれば、ルール改正には全員一致での合意が必要とされる中、いくつかのチームが自分たちの意見に固執したばかりか、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)も以前の予選方式に戻すことに賛成しなかったという。
「FIAとジャン・トッド(FIA会長)は、誰がルールを作るのかという問題に関してチームから指図を受けるつもりはないと言っているんだ」とラウダは付け加えた。
■F1がショー的要素に走るのは間違い
そうした状況のもと、常に歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで知られる1997年のF1チャンピオンであるビルヌーブは、世界最高峰モータースポーツであるF1がドタバタ劇を繰り返していることにいら立ちを隠せないようだ。
「(F1は)ショー的要素を加えようとすることで誤った方向に向かいつつある」
『Le Figaro(フィガロ)』にそう語ったビルヌーブは、次のように続けた。
「インターネットを使って10分ごとに何か違うことをしながら過ごしているティーンエージャーたちにアピールしようと、エックスゲームス(X Games)のようなものを目指そうとしているんだ」
「だが、F1は決してクルマを爆発させたり、ドリフトをやったり、数えきれないほどの追い抜きを見せるショーにはなりえないんだ。F1はハリウッド映画のような作り物ではない。そして、そういう方向に進めばF1が台無しになってしまうだろう」
そう語ったビルヌーブは、次のように締めくくった。
「必要なことは、F1が再びかつての栄光と名声を取り戻すことだ。そして何よりも重要なのは、信頼を取り戻すことだよ」