「我々は決して実力を隠したりなどしていない」
そう主張するのはメルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダだ。
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■メルセデスAMGは本当の力を隠しているとのうわさ
2014年と2015年に2年連続でドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルを独占したメルセデスAMGだが、今年のF1シーズン前公式テストではトップタイムを刻んでみせることはなく、本当の実力を隠してシーズンに臨むつもりだろうとうわさされていた。
開幕戦オーストラリアGPでは、そのメルセデスAMGのルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグが予選では最前列を確保する強さを見せるものの、スタートの失敗により、赤旗中断がなければフェラーリのセバスチャン・ベッテルに優勝をさらわれてしまっていたのではないかと見る者も多い。
それでも、レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、まだメルセデスAMGは実力を隠したままであり、彼らが本気を出せばすべてのクルマを周回遅れにすることすら可能なはずだと語っている。
■なぜわざわざメルセデスAMGは実力を隠すのか?
メルセデスAMGがあえて自分たちの能力を最大限に発揮していないとマルコが考えている理由は多分に政治的なものだ。
2014年に現在のパワーユニットがF1に導入されて以来、メルセデスAMGが圧倒的に強すぎるという事態を迎えている。現在F1人気が減少していると言われているが、その最大の原因はパワーユニットだと主張する者も多く、再び大音量を発生する自然吸気エンジンに立ち返るべきだとの声もある。
そういう背景のもと、もしメルセデスAMGとフェラーリが接近戦を演じれば、少なくともパワーユニット批判の声が小さくなるのではないかとの思惑がメルセデスAMGにあるためだとマルコは推測しているのだ。
■目に見えているものが事実だとラウダ
だが、かつて3度F1タイトルを獲得した伝説的元F1ドライバーでもあるラウダは、そんなことはないと主張している。
イタリアの『La Repubblica(レプブリカ)』から、オーストラリアGP決勝では、本当にフェラーリに負けてしまうのではないかという考えが頭をよぎったかと質問されたラウダは次のように答えた。
「すごく心配だったよ」
「彼らにやられてしまうところだったからね。みんなはそう思わなかったかい?」
「フェラーリが優勝をさらってしまうのではないかと思ったし、それに関しては『しかし』と語るべきものなどないよ」
■赤旗中断がなければフェラーリが勝っていたはず
実際、昨年に比べると決勝レースにおけるメルセデスAMGとフェラーリのタイム差は小さくなっていたのは確かだ。
それは、ショーとしての見せ場を作るためにメルセデスAMGがわざと差を小さく見せるように仕掛けていたのではないかと質問されたラウダは次のように答えた。
「ばかばかしい。事実は、2台のクルマにはまったく差などなかったということだ。赤旗中断によって我々が救われただけだ。あれがなければ彼ら(フェラーリ)が勝っていたはずだよ」
「少なくとも、過去3年間においてはもっとも興奮させられたレースだった」
そう述べたラウダは、次のように付け加えた。
「あれは、今の(パワーユニット)時代に入ってから最高のグランプリだったと思うよ」