F1では2016年からドライバーへの指示がより厳しく規制されるが、これがレースの展開に波乱をもたらす可能性もある。
「ドライバーは援助なしに単独で運転しなければならない」というルールが今シーズンから厳格に適用され、無線やピットボードを使用してドライバーに指示できる範囲が従来より狭くなる。
安全にかかわる情報などは許可されるが、これまで認められていたタイヤの摩耗度、燃料消費、エンジンのセッティング等に関する情報をレース中にチームが伝えることはできない。
「ほとんどの状況を自分で乗り切らなければならないだろうね」とメルセデスAMGのニコ・ロズベルグはブラジルの『Globo Esporte(グローボ・エスポルチ)』に話している。
ザウバーのフェリペ・ナッセも、勉強に余念がないと語る。
「チームとの対話が規制されることで、自分がどんな責任を負うことになるかを勉強しているところだ」
「ドライバーがどうすればいいか分からないような状況もあると思う。問題が発生したときに僕たちにできることはいくつもあるからね」
■ミスが増えると予想するヴォルフ
メルセデスAMGビジネス部門のエグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフは、こうした規制によってドライバーがミスを犯す可能性が高まると『Motorsport.com』に説明している。
「(規制によって)ミスが生まれ、結果も変動するだろう。このスポーツにとって重要なことだ」
「人は格下が勝つところを見たいものだ。圧倒的に強い車が勝つのには飽きてしまう」
■ドライバーの判断で戦略が変わることも
過去2年はメルセデスAMGが圧倒的な強さを誇り、チャンピオン争いは実質的にルイス・ハミルトンとロズベルグの一騎打ちだった。そのため、チームはドライバーが異なる戦略を取ることを禁じてきたが、今年はそうはいかなくなるとヴォルフは話す。
「ドライバーが自分でいつ何を使うか判断しなければならないとすると、異なる戦略が生まれ、レース中の異なる段階でドライバーが違うパワーモードを使用することになる」
「これによってクルマごとの差は大きくなり、最適化の度合いは下がるだろう」
■ドライバーの知性が試される
ヴォルフは、ドライバーが望ましくない戦略を選び、ライバルチームに対して不利な立場に追い込まれても、チームは手をこまねいて見守るしかないといった状況が生まれる可能性もあると認めている。
「レース前にこれまで以上にしっかり計画を練ることができるかにかかってくるだろう。それを覚えている知性があるかどうかだ。適切なタイミングで適切な行動を取る知性と勘があるかどうかにかかってくる」
■ファンにとってはマイナス面も
ファンは放送される無線を楽しんでいた面もあるが、その楽しみが減る可能性もあるとヴォルフは話す。
「無線交信とそこに表れる感情は好かれている。15年前に始まったのもそれが理由だ」
「われわれは行きすぎてしまい、少し減らす必要があるのかもしれない。ただ、ファンにとって良いことなのかどうか私には確信が持てない」
「クルマの中で何が起きているか、ファンは理解しにくくなるだろう。ドライバーが無線を使うことは減るからだ」