メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフが、今後もニコ・ロズベルグに対してチームオーダーを出すつもりはないと主張した。
■今季のタイトルが遠のいたロズベルグ
先週末にモンツァで行われたF1イタリアGP(第12戦)決勝で、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンがポール・トゥ・ウィンで今季7勝目をあげた。だが、今季のF1タイトル争いにおいてハミルトンの最大のライバルとなるチームメートのロズベルグは残り2周ちょっとというところでトラブルによるリタイアに終わった。
これにより、あと7レースを残す段階で、ポイントリーダーのハミルトンに対してロズベルグは53ポイントのビハインドということになってしまった。現在のハミルトンとロズベルグの勢いを考えれば、ロズベルグがこの差を逆転する見込みはもうほとんどないと言っても過言ではない状況だろう。そして、チームとしても余計なリスクを避けるために、今後明確なチームオーダーを発令してもおかしくない状況だ。
だが、ヴォルフはドイツの『Speedweek(スピードウィーク)』に次のように主張した。
「いや、まだあと7レースも残っているし、175ポイント積み上げることも可能なんだ。だから、まだ何も決めてはいないよ」
■ロズベルグ、いまだ戦意を喪失せず
ロズベルグ本人も、イタリアGP決勝後にもまだあきらめたりはしないと語っていたが、『Bild(ビルト)』紙に掲載されたコラムの中でもあらためて次のように書いている。
「もし僕がF1タイトルを獲得しようと思えば、ちょっとだけ奇跡が必要なことは分かっている」
「でも、僕は闘志を失ったりはしていないよ。僕は“あきらめる”という言葉は知らないんだ。まだ、F1チャンピオンになれると信じているよ」
■2人には今後も自由に戦わせるとヴォルフ
当のロズベルグが白旗を掲げていない以上、これまで2人のドライバーに常に公平なチャンスを与えると主張してきたヴォルフとしてもまだチームオーダーを発令するわけにはいかないだろう。
「我々は彼らを自由に戦わせるよ。これまでと同じようにね」とヴォルフは付け加えた。
だが、ロズベルグが今季のF1タイトルを獲得するチャンスはかなり小さくなったと考えるのが妥当な状況であることに変わりはない。
■ウェバーとクルサードがロズベルグの状況を説明
レッドブルにおいてセバスチャン・ベッテル(現フェラーリ)が2010年から2013年まで4年連続F1タイトル獲得という快挙を達成したが、そのときベッテルのチームメートであったマーク・ウェバーはイギリスの『BBC』に次のように語った。
「僕がもっとも不振に陥ったのは、(ベッテルが初タイトルを獲得した年の)翌年のことだった。今、ニコがちょうど同じようなことを経験しているようだね」
さらに、マクラーレン在籍時代に、チームメートのミカ・ハッキネンとの戦いに苦戦した経験を持つデビッド・クルサードも、現在ロズベルグが置かれている厳しい状況に関して次のように語っている。
「基本的に自分よりも少し速いドライバーと一緒にやるということがどういうことなのか、僕は知っているよ」
「降参し、 “ああ、彼のほうが僕よりもいいドライバーだ”などと言うことはない。負けている理由を突き詰めようとするし、勝利するための方法を考え続けるものさ。自分自身を信じ続けてね」
そう語ったクルサードは、次のように付け加えた。
「だけど、ロズベルグは今年ハミルトンと同じような戦いができていないし、そのことは自分でもよく分かっているよ」