このほど控えドライバーとしてメルセデスAMGに加入したドイツの十代、パスカル・ヴェアライン。彼はまるでジェットコースターのような2014年を送っている。
この数週はよい運勢が続いた。先週末ラウジッツリンクで行われたDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)第8戦で、シリーズ史上最年少優勝を記録。その数日前には、メルセデスAMGの型落ちマシンで初F1テストも経験した。
ヴェアラインは今季、開幕から英ブラックリーの本拠地でシミュレーター作業に取り組んでいる。トト・ヴォルフはいう。「ニコ(ロズベルグ)とルイス(ハミルトン)を除けば、彼(ヴェアライン)がもっとも(2014年型)W05の操作に精通している。控えドライバーの役割を与えるのにふさわしい人材だ」
ヴェアラインは、今週末のF1第14戦シンガポールGPからチームの遠征に帯同する。タイトルを激しく争うロズベルグとハミルトンのどちらかが何らかの理由で運転できなくなった場合、彼が代役を務める。
しかし、ヴェアラインにとって今年は決して順風満帆ではない。
去る5月末、ヴェアラインとロズベルグはFIFAワールドカップ・ブラジル大会の前にイタリアで合宿中のドイツ代表チームを訪ね、当地でメルセデス主催のPRイベントに出席した。
ところがヴェアラインは市販車でデモ走行中、その場に居合わせた二人の通行人をはね、怪我を負わせてしまったのだ。
「ヴェアラインの車は突然、向きを左に変えてコースオフ、二人に衝突した」と、当時の目撃者は証言した。
ドイツの民放テレビ局『Sport1』は、そのうち一人は重傷で、7月末にようやく昏睡から回復したと伝えている。
しかし、マネージャーのディートマー・ケーリによると、もはやヴェアラインが法的な責任を負う危険性はなくなったという。
「パスカル(ヴェアライン)は被害者およびその妻と常に連絡を取り合っている」と、ケーリ。「われわれ二人で見舞いにも行ったよ」
ヴェアラインは事故やその後の出来ごとにも「きわめてプロらしく」対応したと、ケーリは語っている。
ドイツ『Focus(フォーカス)』誌は、イタリアの法律により、被害者が正式に訴え出ない限りヴェアラインが裁きを受けることはないと報じた。
地元のグイド・リスポリ検事も、ヴェアラインは不起訴処分が「妥当」だと語っている。
リスポリ検事は当初、事故の過失はヴェアラインにありとの立場だった。時速100キロで走っていたうえ、ロズベルグとの車間が「明らかに狭すぎた」と主張していたのだ。