トップドライバー同士の争いを大ヒット映画になぞらえ、最近ドイツのマスコミは、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)とニコ・ロズベルグ(同)の確執を「スターウォーズ」と呼んでいる。
波乱を呼んだF1第6戦モナコGP予選終了後、怒り心頭のハミルトンは、ロズベルグをはじめ、パディ・ロウ、トト・ヴォルフ、ニキ・ラウダといったチーム首脳との定期ミーティングで話し合いを行った。
チームメート同士で今も会話を?この問いにロズベルグは笑顔で次のように答える。「もちろん!」
ハミルトンは逆に否定的だ。モナコGP決勝で連勝がストップ、選手権首位の座をロズベルグに明け渡した彼は、同じ質問に「ノー」という。
ラウダによると、24日(土)のミーティングでロズベルグが頭を下げたにも関わらず、ハミルトンに受け入れた様子はなかったという。
長年つちかった友情が損なわれて残念?と英テレビ局『Sky(スカイ)』が質問すると、ハミルトンは「別に友人じゃないし」と答える。「僕らは同僚だよ」
今季序盤は落ち着きと成熟ぶりを漂わせていたハミルトン。しかし25日(日)、彼はロズベルグばかりかチームにも腹を立てている感じだった。
「どうせ僕をピットに呼び寄せないだろうと思ったよ」と、担当エンジニアに食ってかかったハミルトン。レース中、ピットインのタイミングが遅すぎたという主張だ。
ハミルトンとロズベルグに生じた亀裂は、さらに大きい。
表彰式後のインタビューで、ハミルトンは皮肉たっぷりに「走りで失敗を犯さずにすんでよかったよ」と語っていた。一日前の予選でロズベルグがやらかした「失敗」をやゆしているのは明らかだ。
今では、ロズベルグの発言からも両者に流れる冷たい空気を感じとれる。昨年に続いてモナコGPを連覇、選手権リードを取り戻したロズベルグは、次のようにいう。「何をきかれても、ルイスについてはコメントしたくない」
ハミルトンとの関係を探ろうとする報道陣に、ロズベルグはこう説明する。「『友だち』と呼ぶのは大げさだ」「お互い協力しあって仕事しているけどね」
だがわずか数日前、ロズベルグは、ハミルトンについてのこぼれ話を披露している。モナコで隣人同士の二人。ロズベルグによるとハミルトンの冷蔵庫はいつもカラで、たまに余りのリソール(コロッケ)を求めてロズベルグ宅のドアをノックするのだとか。
ドイツ『Sky(スカイ)』が今後もハミルトンの訪問はあるかロズベルグにきいたところ、答えはこうだ。「それはどうかな」
3度のF1世界タイトル獲得の経験を持つラウダは、タイトル争いがいかに熾烈かを熟知している。彼は、ハミルトンとロズベルグの手綱をしっかり締めるつもりだ。
「二人ともチームが求めるものを理解している。けさ(25日)念押ししたよ」と語るラウダ。「私はドライバーの目付役として給料をもらっているようなものだからね!」
モナコと別件で、ハミルトンにはロズベルグに謝罪しなければならないことがあった。二週前のF1第5戦スペインGP決勝中、後方を走るロズベルグを抑えるため、ハミルトンはチームの教えに逆らってエンジン出力を「高」に設定したのだ。ラウダも事実として認めている。
チームの指示通り「低」の設定で走っていたロズベルグは、ハミルトンの詫びを受け入れたという。
「すべて順調だ」とラウダはいうのだが・・・。