かつてはF1大国として知られたドイツだが、近年ではF1人気が下火となっており、伝統のドイツGPも2019年を最後にF1カレンダーから姿を消している。
新型コロナウイルスの影響を受けた2020年にはニュルブルクリンクでアイフェルGPという名称で代替レースが開催されたものの、その後はF1サーカスがドイツに足を踏み入れることはなくなっている。
さらに、長年にわたってドイツでF1中継を行っていたテレビ局『RTL』が2020年シーズンを最後に撤退。それでも昨年までは2レースのみ無料中継が行われていたものの、今年からはそれもなくなり、F1を見たい場合には有料チャンネルを利用するしかなくなっている。
実際のところ、7度F1王者となったミハエル・シューマッハを始め、多くのF1ドライバーを輩出してきたドイツだが、2023年にF1グリッドに並ぶドイツ人ドライバーは35歳のニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)の1人だけだ。
■ドイツは生身のヒーローを必要としているとトスト
アルファタウリのチーム代表を務めるオーストリア出身のフランツ・トストは、ドイツのテレビ局『Sport1(シュポルト1)』からドイツの現状について質問されると次のように答えた。
「人々はヒーローを必要としているんだ。そして、彼らが必要としているのは、金属ではなく、血と肉でできた人間なんだ」
「かつては、エンジンやメルセデスのマシンではなく、ミハエル・シューマッハの勝利を見たかったんだ」
「ほかの例をあげるなら、ボリス・ベッカー(元テニスプレーヤー)だろうね。彼が現れるまではテニスに興味を持つのは富裕層だけだったよ」
「それが、ボリスとシュテフィ・グラフの成功で一変したんだ。突然、すべての子供たちがテニスをしたいと思うようになったんだよ」
■カギはミック・シューマッハのグリッド復帰
そう語ったトストは、ドイツでのF1人気を再び高めていくためには、ミハエル・シューマッハの息子である23歳のミック・シューマッハがもう一度フルタイムドライバーとしてF1で活躍することが必要なのだと次のように続けた。
「一般大衆から本当に注目されるのは、常にフォーカスが当たっているときだけなんだ。そして、それができるのはパイロットとしてだけだよ」
「だからこそ、ミックができるだけ早くグリッドに戻る道筋を見いだすことが重要なんだ。それは不可能ではない。だが、簡単なことでもないよ」
2021年にハースでF1デビューを飾ったミック・シューマッハだが、昨シーズン限りでそのシートを失い、今年はメルセデスのリザーブドライバーを務めることになっている。