フェラーリF1のマッティア・ビノット代表が辞任する原因は、シルバーストーンでシャルル・ルクレールに指をさされた瞬間にさかのぼるかもしれない。
アブダビGPでは否定していたものの、フェラーリに28年在籍したビノットが大晦日以降もマラネロのチーム代表を務めることはないと認めた。
フェラーリから「辞任を受け入れる」という声明が発表されたが、53歳のイタリア人にはすでにアルピーヌやアストンマーティンへの移籍が噂されている。
「スクーデリア・フェラーリの新しいチーム代表を決定するためのプロセスが進行中で、新年には最終決定される予定だ」とフェラーリは発表している。
■ルクレールとビノット代表は7月から会話すらしていなかったとの報道
最有力候補はザウバーのボスでフランス人のフレデリック・ヴァスールだが、彼はニコラス・トッド率いるルクレール陣営と長年親密な関係にある。
スポーツ紙『L'Equipe(レキップ)』は、ルクレールはカルロス・サインツとの同列ナンバー1体制に不満を持っており、ビノットとは7月以降、会話すらしていなかったと報じている。
ルクレールはInstagramにイタリア語で「我々は非常に濃密な4年間を共に過ごし、大きな満足感とともに、必然的に我々を試した瞬間もあった」と投稿している。
「あなたへの尊敬の念は決して薄れることはなく、同じ目標に向かって常に全力を尽くしてきた。幸運を祈ります」。
『Sky Italia』の特派員カルロ・ヴァンジーニは、ルクレールとビノットの緊張が「不安定さ」の引き金になったと語り、「個人的なことだが、チーム内のヒエラルキー(階層的)構造の欠如が原因だ」と説明する。
また、シルバーストーンでビノットが不満げに、しかし静かなルクレールを指差したことについては、ヴァンジーニはこう語る。「もし彼が90年代のドライバーにあれをやっていたら、指はそのまま残っていなかったと思う」。
■元フェラーリでF1のドメニカリCEOは「立場上、何も言えない」
フェラーリの元ボスで、現在はF1のCEOを務めるステファノ・ドメニカリは「立場上、何も言えない」とスポーツ紙『Marca(マルカ)』へのコメントを控えたが次のように語った。
「マッティアの今後の活躍を祈るとともに、フェラーリが今年から始まり、世界選手権2位で締めくくった道を継続できる人物を見つけることを願うだけだ」
「この瞬間、F1にとって重要なのは、競争力のあるチームを持つことだ。もちろん、それが私たちの願いだよ」と、ドメニカリは付け加えた。
■後任候補は生え抜きか?
イタリアの情報筋によると、54歳のヴァスールは、現在アルファロメオとして知られているスイスのザウバーチームから離れることについてまだ交渉中だという。
もう一人の候補者であるマクラーレンF1のアンドレアス・ザイドル代表は、この役割を辞退したか、あるいは高額の契約解除金なしにマクラーレンから離れることができなかったのだろう。
しかし、レッドブルのヘルムート・マルコ博士は、『Sport1』に次のように語っている。「フェラーリは、自分たちの仲間のひとりにこの仕事を与えるだろうと想像できるよ」。
その場合、ビノットの代理を務めてきたローラン・メキエスが最有力候補となるが、フェラーリ会長のジョン・エルカンに近いチームのレースマネージャーであるジョナサン・ジャコバッツィがより適任と思われる。
フェラーリF1代表という名誉ある職は、大きなプレッシャーを一手に引き受けることになるため、よほど自信のある者でないと務まらないだろう。