FIA(F1統括団体の国際自動車連盟)のF1レースディレクターを務めるマイケル・マシが、先週末にムジェロで行われたF1第9戦トスカーナGP決勝で起きたクラッシュはF1やFIAの責任ではないと主張した。
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トスカーナGP決勝ではスタート直後に複数台のマシンがからむクラッシュが発生し、セーフティカーが導入される展開となった。
そして、隊列を先導していたセーフティカーが戻り、レースが再開されようとしたときに先頭を走行していたバルテリ・ボッタス(メルセデス)が通常よりもかなりの低速でスタートラインに向かっていった。
オーバーテイクが難しいムジェロ・サーキットだけに、どのドライバーもスタートでできる限り前のクルマを追い抜こうと考えていたのだろうが、後方のドライバーたちが勢い余って次々にクラッシュを演じてしまうという展開となってしまった。
ドライバーたちの中には、通常ではあり得ない低速でスタートラインに接近しようとしたボッタスに非があったと考えている者もいる。
例えば、フェラーリのセバスチャン・ベッテルはボッタスの超低速走行は「全く必要のないことだった」と批判し、「誰もけがをしなくてよかったよ」と付け加えた。
また、ルノーのエステバン・オコンも次のように語っている。
「ボッタスがやったことが本当に合法的なものだったのかどうか僕にはよく分からない。だけど、次のレースではそれについて話し合う必要があるね」
一方、ボッタスは自分を批判する者たちは「鏡を覗き込むべきだね」と反論している。
実際のところ、トスカーナGPのF1競技委員たちはあのクラッシュが起きたのは中団グループに位置していたドライバーたちの不注意のせいだったとして、ケビン・マグヌッセン(ハース)、ダニール・クビアト(アルファタウリ)、ニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)、アレクサンダー・アルボン(レッドブル)、ランス・ストロール(レーシングポイント)、ダニエル・リカルド(ルノー)、セルジオ・ペレス(レーシングポイント)、ランド・ノリス(マクラーレン)、エステバン・オコン(ルノー)、ジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)、アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)、カルロス・サインツ(マクラーレン)の12人に対して正式に“注意”を与えている。
しかし、ボッタスは、本当に責任を問われるべきなのはレースを運営する側だと主張している。
「今年の違いはセーフティカーだよ。彼らはライトを消すのがすごく遅いんだ。だから、かなり遅い時点でしかギャップを作ることができなくなっているのさ」
そう語ったボッタスは次のように続けた。
「FIAなのか、あるいはFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント/F1オーナーのリバティ・メディアが運営する商業権管理組織)なのか、誰が今のやり方を決めているのか僕には分からない。だけど、彼らはライトを消すのを遅らせることでもっと見せ場を作ろうとしているんだ」
「僕たちのチームが今朝もまた話し合いをしようとしたことは知っている。ここではそれが少々不安だったからね。だけど、彼らはその方がショー的にはいいから今のやり方を続けるつもりだと言うだけだった」
ムジェロで今季6勝目をあげたメルセデスのルイス・ハミルトンもボッタスと同意見だ。
「それ(責任)は意思決定者にあるよ。それが誰なのかは知らないけれどね。彼らがもっとエキサイティングなものにしようとしているのは明らかだよ。だけど、それがみんなを危険にさらすことがついに今日示されたわけだ」
しかし、F1レースディレクターのマシは、そうした意見に耳を傾けるつもりはないようだ。
「彼らは好きなだけ批判することができる」
「ここ(F1)には世界でも最高レベルの20人のドライバーがいる。だが、ここで行われたF3のレースでも非常に似たような状況となったが、若者たちは非常によう理解していたし、事故も起きなかったよ」
そう主張したマシは、今後セーフティカー導入時のリスタート手順を見直す可能性があるかと尋ねられると次のように答えた。
「見直す必要はない」
「長いホームストレートが(クラッシュ発生の)要素のひとつだったことは間違いない。だが、レースがスタートするのはコントロールラインを越えてからだし、ドライバーは誰でもそれはすごくよく分かっているよ」
マシはさらに、2020年にリスタート手順が見直されたのはショーとしての見所を増すためであり、そのために安全面をおろそかにしたという見方は間違っていると次のように続けた。
「全く違うよ。最も優先すべきは安全だというのがFIAの見解だ。誰であれ、そうではないと言うのは実際のところ無礼だよ」