アルファロメオF1チームを率いるフレデリック・バスール(チーム代表)も、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が今季これほどまでにセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)にプレッシャーを与える存在になるとは思っていなかったようだ。
フェラーリの育成ドライバーであったモナコ出身のルクレールは、昨年フェラーリがエンジンを供給するアルファロメオ・ザウバーからF1デビューするチャンスを得た。
序盤数戦こそあまり目立つことがなかったルクレールだが、第4戦アゼルバイジャンGPの予選で初めてチームメートのマーカス・エリクソンを上回ると、決勝でも6位初入賞を達成。
その後の17レースでは予選で15勝2敗とエリクソンを圧倒したルクレールは、決勝でもシーズントータル10回のポイントフィニッシュを達成して39ポイントを獲得。チームメートに30ポイントもの大差をつけてみせた。
その活躍が認められ、2年目にしてトップチームのフェラーリのシートを獲得したルクレールだが、F1関係者やファンの多くは、しばらくの間は通算4回のF1タイトル獲得実績を持つ経験豊かなベッテルに対して苦戦を強いられるだろうと考えていた。
ところが、そのルクレールは今季の第2戦でいきなりポールポジションを獲得すると、レース終盤で発生したマシントラブルによって初優勝こそ逃したものの初の3位表彰台を獲得。
そして、その後もベッテルに勝るとも劣らぬパフォーマンスを発揮し、最近ではフェラーリの地元イタリアのメディアがフェラーリに対しルクレールをナンバー1ドライバーとして処遇すべきだとの主張を展開するまでに至っている。
昨年、チーム代表としてルクレールの走りを見ていたバスールはフランスのテレビ局『Canal Plus(カナル・プリュ)』に次のように語った。
「シャルルがこれほどすぐにフェラーリに慣れるとは予想していなかったよ」
「ベッテルの方がすべてにおいて苦しんでいるようだ。彼らはどちらもメルセデスから受けるプレッシャーの下にいるが、ルクレールの方がそれにうまく対応できているね」
しかし、ルクレールは先週末に行われたF1ドイツGP決勝では痛恨のクラッシュを演じてしまった。バスールはそのことに言及しながら次のように続けた。
「シャルルの今シーズン前半は素晴らしかった。もちろん、すべてのレースでそうだったわけではない。だが、私はドイツでのクラッシュはそれほど大した問題ではないと思っているよ」
「先週末はメルセデスの2人のドライバーたちも悪い結果に終わってしまった。最後の2つのコーナーは非常に滑りやすかったし、大勢がミスを犯していたんだ」
そう語ったバスールは次のように付け加えた。
「しかし、彼(ルクレール)は最初から速さを見せていたし、ポールさえとれそうに見えた。そしてその前の3レースか4レースでも強さを見せていたよ」
ここまでの決勝結果だけ見れば、ルクレールに対して7勝4敗でリードしているベッテルの方がトータル141ポイントを稼いでドライバーズランキング4番手につけており、トータル120ポイントでランキング5番手のルクレールを抑えている。
しかし、もしシーズン後半にその差が縮まり、あるいはルクレールがランキングでもベッテルを上回るようなことになれば、最近ささやかれているベッテルの引退説、あるいはレッドブルへの復帰説もさらに現実味を帯びてくるのは確かだろう。
先週末にドイツで行われたホームレースで最後尾グリッドからスタートして2位表彰台を獲得したベッテルとしては、その勢いを今週末のハンガリーGP(4日決勝)にもつなげ、いい形で夏休みを迎えたいところだろう。