2015年シーズンにはいくつかの政治的な動きが起こったことでF1が崩壊の危機を迎えていたと報じられたことに対し、F1最高責任者のバーニー・エクレストンが反論を行った。
■F1は絶対に崩壊しない
まず、今季大きな話題となったのが、2016年に搭載するエンジンがなかなか決まらず、F1撤退の可能性もあると言われたレッドブルの件だろう。
だが、エクレストンはドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』のインタビューの中で次のように語った。
「F1は決して崩壊などしないよ。もしレッドブルとロータスを失っていたとしてもね」
さらに、エンジンサプライヤーであったルノーもF1から撤退するかもしれないと言われていた。最終的にはかつて自らのワークスチームであったエンストンに拠点を置くロータスを買い戻し、2016年からは再びフルワークス体制で臨むことになった。
「彼らがすべて残ることになってよろこんでいるよ」と語ったエクレストンは、次のように続けた。
「我々はルノーがロータスを買収し、レッドブルにエンジンを提供することができるよう資金面での支援を行った。だが、ルノーほどの大企業がそういう支援を必要としたというのは少しばかり奇妙な話だがね」
■問題はメルセデスとフェラーリ
2015年にF1で起こった一連の政治的動きは、エクレストンにとってもこれまでで一番厳しい問題だったかもしれない。
だが、エクレストンは次のように主張した。
「これまでにも、そして今も、問題は常にあるんだ。今年困難だったのは、エンジンメーカーたちが自分たちの利益だけを求めようとしていたことだ」
「メルセデスにとってレッドブルにエンジンを供給するのは非常に簡単なことだったはずだ。彼らはマルシャ(マノー)にエンジンを供給する。だが、もし私が彼らなら、レッドブルのほうがよかったと思うよ。そのほうがもっとたくさん金をとれたはずだからね」
「彼ら(メルセデス)がそうしなかった理由は、我々がファンに提供しなくてはならないものを避けたかったんだ。それは、きっ抗した戦いになることだ」
85歳のエクレストンは、その問題がさらに悪化したのは、フェラーリもレッドブルを助けることを拒んだためだと次のように続けた。
「私は、メルセデスとフェラーリの間に合意がなされていたと思っている。現時点では、彼らは腰の部分でつながった結合体双生児だよ。片方だけでは何もしないんだ」
「それが本当かどうかは分からないが、私はそう聞いている。メルセデスはフェラーリに対し技術的にも少し手助けをしている。フェラーリが差を縮めてきたのはそれが理由だし、彼らはそれで満足している。つまり、彼らは一緒に同じボートをこいでいるのさ」
■断固としてF1を変える
エクレストンは、普段はあまり表に出たがらないFIA(統括団体である国際自動車連盟)のジャン・トッド会長でさえその問題には気付いていると主張。FIAではエクレストンとトッドに問題解決を「全権委任」しており、エクレストンは一方的にF1になんらかの変更を加えることも可能となる。
「F1を2つのチームの手に委ねるわけにはいかないんだ」とエクレストンは主張した。
まず最初に手掛けるのはF1委員会とストラテジー・グループの廃止ということになるのかと聞かれたエクレストンは次のように答えた。
「そのうち分かるだろう。その答えはイエスかもしれないね」
「エンジンメーカーたちが1月に何と言うか様子を見ることにしよう。我々としてはもっとシンプルで安価なエンジンを望んでいる。それはコスワースのような独立系メーカーでも製造が可能なものだ」
■フェラーリは拒否権を発動できない
だが、フェラーリが伝統的に「拒否権」を持っていることはよく知られている。仮にそうした案を提示しても、フェラーリがその拒否権を行使して廃案にしてしまうのではないかとの質問を受けたエクレストンは次のように説明した。
「彼ら(フェラーリ)がそれを使えるのは非常に限られた場合だけだ」
「例えば、それによってフェラーリがクルマを最初から造り直さなくてはならなくなるとかね」
「もし我々が何かを決定し、それを気に入らないチームがあれば、彼らは仲裁機関に訴えることはできる。だが、我々のほうが勝つだろう。なぜなら、我々はそれを商業的な理由で行うのではなく、F1を保護し、誰にとっても公平な戦いができるようにするためだからだ」
エクレストンはそう語ると、次のように付け加えた。
「現時点では、そういう状態にはなっていない」