レッドブルF1の最高エンジニアリング責任者を務めてきたロブ・マーシャルのマクラーレン移籍には、2026年以降にマクラーレンがレッドブル・パワートレインズと契約するということが含まれているのかもしれない。
■マクラーレンCEOがレッドブル・パワートレインズを訪問
2023年2月、パワーユニット(PU)・レギュレーションが変わる2026年から、レッドブル・パワートレインズはフォードと組むことを発表している。
その2月末、マクラーレン・レーシングCEOのザック・ブラウンはレッドブル・パワートレインズを訪問し、「パワーユニット供給」について話し合ったことをクリスチャン・ホーナーは認めている。そこでは当然、レッドブルF1最高エンジニアリング責任者(Chief Engineering Officer)のロブ・マーシャル移籍についても話し合ったことだろう。
そして5月末、ロブ・マーシャルの移籍を、レッドブルとマクラーレンがプレスリリースで同時に発表した。
レッドブルF1の重要な役職だったマーシャルの移籍があまりにも平和的でスムーズだったことから、この移籍の裏には、2026年からレッドブル・パワートレインズの搭載が条件だったのではないかと噂されている。
■マクラーレンが実力未知数の新エンジンを採用するメリットは?
レッドブル・パワートレインズ製PUの実力は未知数だが、マクラーレン側には決断するだけのいくつかのメリットが考えられる。
まず、エンジンを製造するレッドブル・パワートレインズは、ホンダやメルセデスからスタッフを雇用していて、その知識や経験が生かされているのは間違いないため、現在レッドブルF1が搭載している力強いホンダエンジンに近いものが出来る可能性がある。
レッドブル・パワートレインズのバッテリー技術についてはフォードが担うとしているが、フォードとしても供給先が2チーム4台から3チーム6台になれば、製造、データ収集、開発メリットが増える。
マクラーレンCEOのアメリカ人ザック・ブラウンはアメリカ市場でスポンサーを増やしており、もし「マクラーレン・フォード」誕生となれば、マクラーレンとしても、フォードとしても、マーケティングやブランディング面でのメリットも大きい。
■レッドブル・パワートレインズはコスワースになる?
フォードは過去F1に参戦していた際、レース用エンジンチューナーのコスワース社に資金提供し、フォードのバッジをつけて「フォード・コスワース」エンジンとして多くのチームに供給。そしてそのエンジンはマクラーレンにも搭載されていた。
今回のレッドブル・パワートレインズ社製エンジンにフォードが資金とバッテリーを提供し、フォードのバッジをつけるのも根本的な手法は似ている。
マクラーレンは、レッドブル・パワートレインズから購入したパワーユニット(PU)を「フォード」としてそのまま使う可能性もあるだろうが、OEMとして別の自動車メーカーやブランドのバッジをつけて走行する可能性も考えられるだろう。近年だと「ホンダRBPT(製造:ホンダ・レーシング)」、「タグ・ホイヤー(製造:ルノー)」などがある。
また、レッドブル・パワートレインズとフォードにとっても、既存F1チーム(ハース、ウィリアムズ)やF1新規参戦を目指すチームへ高性能PUを安定供給できれば、それがOEMという形であってもPU販売ビジネスが成立する。
F1参戦に興味を持っている自動車メーカーもバッジネームという形でF1参戦が容易になる。
そして、各自動車メーカーが市販するハイパフォーマンスカーへのレッドブル・パワートレインズ製PU搭載もありえるだろう。マクラーレン、レッドブル、フォードというトリプルネームのハイパフォーマンスカーが販売される可能性も考えられる。