2025年もしくは2026年からのF1新規参入を目指しているアメリカのアンドレッティ・キャデラックだが、買収可能な既存F1チームが現れるのを気長に待つつもりはないようだ。
■チーム数増加に難色を示す既存F1チームたち
F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、F1チーム数を現在の10チームから最大12チームにまで拡大するための検討プロセスを正式に開始している。
しかしその一方で、F1と既存の10チームはチーム数を今以上に増やすことにより収入と特権的立場が希薄化することを懸念している。
こうした中、アンドレッティ・キャデラックのF1参入に好意的な立場であることを示しているマクラーレン・レーシングのザック・ブラウンCEOは今週、近日中に行われるF1委員会の会合において新規チームの参戦費を現在の2億ドル(現在のレートで約267億円)から引き上げる案が議論される予定であることを明らかにしている。
■F1に参戦したければ既存チームの買収しかないとレッドブル首脳
だが、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、アンドレッティがこの論争を終わらせる最も簡単な方法は、単に既存のチームを買収することだと主張している。
ホーナーはイギリスの『Daily Mail(デイリー・メール)』に、「アンドレッティとキャデラックには何の恨みもない」が、11番目のチームがF1に参入することを認めるかどうかは、単に「誰が実際に金を出すか」の問題なのだと語り、次のように付け加えた。
「レッドブルはジャガーだったし、それは元々スチュワート・フォードだったんだ」
「メルセデスを遡れば、ホンダ、BAR、そしてティレルに行き着く。アストンマーティンも元々はジョーダンだった。それが長年にわたる手順だったんだ」
レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)もこのホーナーの発言を受けて、ドイツの放送局『Sport1(シュポルト1)』に次のように語っている。
「クリスチャンの発言に付け加えることは何もないよ」
「財政的な基盤は常に確保されなければならないからね」
■すでにザウバーの買収を試みていたアンドレッティ
しかし、実際のところ、元F1ドライバーでもあるマイケル・アンドレッティが率いるアンドレッティ・オートスポーツも2021年にアルファロメオという名称で現在戦っているスイスに拠点を置くザウバーの買収を試みている。
当時、アンドレッティはその交渉が決裂した理由を次のように語っていた。
「基本的には交渉の最後の段階で支配の問題に行き着いたんだ。それがこの取引をダメにしてしまったよ」
そのザウバーは、2026年から正式にエンジンサプライヤーとしてF1に参戦するアウディの支配下に収まることが決まっている。アウディはすでにザウバーの株式25パーセントを取得しており、2025年までにはトータルで75パーセントの株式を取得し、筆頭株主となる予定だ。
■買収可能なF1チームがないのが現実
マイケル・アンドレッティの父である1978年のF1チャンピオンであるマリオ・アンドレッティは今週、この問題について次のように語った。
「事実として、現在のチームはどれも売りに出されてはいないんだ」
「マイケルと彼のチームはすでにそのシナリオを広範囲にわたって検討したが、手に入るものは何もないよ」
■アンドレッティの参戦が実現すればエンジンはアルピーヌ
一方、ルノーのワークスF1チームであるアルピーヌのローラン・ロッシCEOが、16日(木)に行われた2023年型マシンの発表会において、アンドレッティ・キャデラックのF1参戦が認められた場合には自分たちがエンジンを供給する契約がすでに結ばれていることを認めた。
「我々は、彼らがF1参戦のためのライセンスを取得したら、パワートレインを提供することで合意している」
「しかし、F1サーカスに参加できることを示すのは彼ら次第だ。そのためには、彼らが申請書を提出し、F1サーカスとチームに価値をもたらすことができると示すためのプロセスを踏む必要がある」
そう語ったロッシは次のように付け加えた。
「彼らがそれを証明し、ほかの者たちが評価することになる。もし彼らが加わるならば、我々は喜んで彼らと組むだろう。もし彼らが参加しないのであれば、結局のところ、うまくいかなかったということだ」
現在アルピーヌが搭載しているエンジンは親会社であるルノー製エンジンとなっている。だが、ルノーは2026年に導入される新エンジンレギュレーションにはアルピーヌの名前で製造者登録を行っており、2026年からはルノーエンジンではなく、アルピーヌエンジンと呼ばれることになる見込みだ。。