イタリアの名門F1チームであるフェラーリは、2019年からチーム代表を務めていたマッティア・ビノットを更迭し、その後任にフランス出身のフレデリック・バスールを起用することを決定した。
現在はアルファロメオと呼ばれているザウバーのチームCEO兼代表を2017年から務めてきた54歳のバスールだが、その手腕がフェラーリで通用するかどうかについては、F1関係者の間でも意見が分かれているようだ。
■ビノットを追い出す必要はなかったとミナルディ
かつて、現在のアルファタウリの前身であるミナルディのチーム設立者兼代表としてF1で戦った経験を持つジャン・カルロ・ミナルディは、今回のフェラーリの判断に納得していないようだ。
75歳のミナルディは、母国イタリアの『Corriere dello Sport(コリエーレ・デロ・スポルト)』に次のように語っている。
「バスールは確かに優秀だ」
「しかし、私ならマッティア・ビノットを変えなかっただろう」
「彼はもう一度チャンスを得て然るべきだ」
■フェラーリの判断は正しかったと元F1ドライバーのスレール
だが、スイス出身の元F1ドライバーであるマルク・スレールは、フランス人のバスールは「非常に打たれ強い」人物であるため、フェラーリのチーム代表という新たな仕事にも適していると考えている。
「アルファロメオは何年も悪い時期が続いたが、彼はチームをそこからある程度引きずり出すことができた」
『formel1.de』にそう語った71歳のスレールは、次のように付け加えた。
「以前のシーズンでは、彼は多くの批判を受けた。しかし、彼は常に冷静だった。それは、彼がフェラーリでも生き残れることを意味するものだよ」
スレールはさらに、非常に速いF1マシンを手にしながら、いろいろな問題を抱えたことでタイトル争いに絡むことができなかった2022年シーズンを経てフェラーリがチーム代表の交代という根本的な改革を行ったのは正しいことだと次のように続けた。
「ビノットには素晴らしい技術的バックグラウンドがあるが、彼はレース中には基本的に役に立たないんだ。残念だよ」
「彼はあまりにも多くのチームのミスを受け入れ、すべてを正当化しようとした。でも、それではだめなんだ。結果が伴わなければならない。そして、バスールはそれがわかっている」
■バスールは逆風に立ち向かう必要があるとイタリア人ジャーナリスト
一方、フェラーリの内部事情に精通しているジャーナリストとして知られるレオ・トゥッリーニは、バスールには逆風が待ち構えていると考えているようだ。
「バスールはレースの専門家だ。そして、彼は新車を受け継ぐ。それはボーナスにもなりえるが、悪い結果が出た場合の言い訳にもなるだろう」
そう語ったトゥッリーニは、バスールが非常に大きな課題を抱えることになるのは確かだと次のように付け加えている。
「彼は2000人以上と2人のドライバーで構成されたチームを率いることになる。そしてもちろん、ピットウォールの変革、コミュニケーションギャップの修正、政治的重みの修復、そして最後に、15年間負け続けてきたチームに勝利のメンタリティーを取り戻さなければならないんだ」