昨年ハースでF1を戦っていたロシア人ドライバーのニキータ・マゼピンが、ロシアを批判する必要があるのであれば、自分はF1には戻らないと主張した。
■ウクライナ問題によりハースから契約解除されたマゼピン
ロシアではウクライナ紛争をめぐる新たな論争が勃発しており、ダカールラリーで活躍するドライバーのコンスタンチン・フィルツォフを含むアスリートたちは、ロシア公民権の剥奪か、それともプロとしてのキャリアを諦めるかのどちらかを迫られることになっている。
今年に入り、ロシアがウクライナに侵攻したことを受けて世界的にロシアに対する制裁措置がとられたが、ハースF1チームもこれを受けてニキータ・マゼピンと、タイトルスポンサーを務めていた彼の父親が経営する『ウラルカリ』との契約を解除した。
■F1を続けるにはロシアを批判する文書へのサインが必要だった
23歳のマゼピンは、『RIA Novosti(ロシア・ノーボスチ通信社)』に対し、もし自分がF1のシートを維持しようとしたなら、FIA(国際自動車連盟)は彼にロシアを非難する文書に署名するよう求めただろうと次のように語った。
「僕は3月にこの文書を最初に受け取った中のひとりだよ」
「だけど、僕は、選手には中立の立場を保つ機会を持たせて欲しいと思っているんだ」
伝えられるところによれば、フィルツォフが選んだ解決策はロシア公民権を放棄することだったようだ。そして、フェラーリのアカデミードライバーであるロベルト・シュワルツマンも同じ道を歩んでおり、現在はイスラエル国籍でレースに参戦している。
マゼピンは次のように続けた。
「そのことでほかの誰かを責めることはできない。僕たちはアスリートであり、誰にでも自分の選択があるからね」
「フィルツォフだけじゃない。シュワルツマンも同じことをした。だけど、それは個人としてよく考えるべきことなんだ」
「スポーツのために自分の国を諦めるのかどうか、それは誰もが自分で選ぶことができる。だけど、僕はそうするつもりはないよ」
■ロシアを支持したチェスチャンピオンを尊敬するとマゼピン
一方、ロシアの有名なチェスチャンピオンであるセルゲイ・カヤキンは、ロシアによるウクライナ侵攻を支持したことで、競技に出場することを禁止されている。
「カヤキンの言葉に僕は驚かなかったよ」
23歳のマゼピンはそう語ると、次のように付け加えた。
「セルゲイのことはよく知っているし、彼の立場もわかっている。僕は彼を尊敬しているよ」
■ハースF1との法廷闘争もまもなく開始
一方、ハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーは、今季のF1第16戦イタリアGPが開催されたモンツァで、マゼピンがハースに対して未払いとなっている報酬を支払うよう求めた訴訟文書を受け取ったことを認めていた。
この件に関して、マゼピンは『Tass(タス通信)』に次のように語っている。
「僕たちは訴訟を起こした。それは重要なものだし、通知書は受理されたよ」
「現時点では、僕たちの訴訟相手であるハース・チームは、裁判所からの通知に対して30日以内に返答しなければならないことになっているんだ。スイスのどこでいつ審理が行われるかは、もうすぐわかるよ」