レッドブルでは、アメリカのインディカーで活躍する22歳のコルトン・ハータを2023年にアルファタウリでF1デビューさせる方向で動いていた。
これは、現在アルファタウリに所属しているフランス人ドライバーのピエール・ガスリーがルノーのワークスF1チームであるアルピーヌに移籍する道を開くためだった。
■2023年のF1デビューは夢と終わったハータ
だが、問題は、ハータがF1出走に必要となるスーパーライセンスの発給を受けられる資格を有していないことだった。
F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)では、スーパーライセンスが発給される条件として、過去3年以内に獲得したスーパーライセンスポイントが40ポイント以上であることを定めているが、ハータが現時点で有しているのは32ポイントで、その基準に到達していないのだ。
レッドブルでは、新型コロナウイルス感染症などによりモータースポーツ界がここ数年にわたって混乱した状況にあったことによる「不可抗力」を主張するとともに、ハータにプライベートF1テストや今後のF1レースで金曜フリー走行に出走させることを条件にFIAに対して特例としてハータにスーパーライセンスを発給するよう交渉を行っていた。
だが、最終的にFIAは、ハータに対して特例措置を認めないことを決定。レッドブルはハータを2023年にF1デビューさせる計画を断念している。
■インディカーの格付けに不満を表すハータ
2023年にF1デビューするチャンスが消えたことについてオランダの『De Telegraaf(テレグラーフ)』から質問を受けたハータは、自分に対して特別に優遇措置がとられることを望んでいたわけではないとしつつ、次のように答えている。
「僕は、現在のポイント構成をベースとしたFIAの立場は理解しているよ」
「個人的には、インディカーのポイント格付けは低すぎると思っているけれどね」
伝えられるところによれば、レッドブルでは、ハータを冬の間にマイナーな選手権に参戦させることでスーパーライセンスポイントを32から必要な40に引き上げることも検討していたという。
ハータも、そうした話があったことを認めながら、次のように付け加えている。
「ほかのクラスで走ってポイントを稼ぐチャンスもあったよ。だけど、僕はもう4年間ここ(インディカー)でプロドライバーとしてやってきているし、そんなことは検討もしなかったよ」
■F1はエリート主義スポーツだとグレアム・レイホール
一方、ハータと同じく現在インディカーで活躍しているグレアム・レイホールは、今回ハータの参戦を拒否した形となったFIAやF1に対して大いに不満を抱いているようだ。
「F1はエリート主義のスポーツだよ。彼らは我々を必要としていないんだ。それを覚えておかないとね」
かつて2001年に現在のレッドブル・レーシングの前身であるジャガーのチーム代表を務めていたボビー・レイホールの息子である33歳のアメリカ人ドライバーはそう語ると、次のように付け加えた。
「彼らはアメリカ企業のお金や、アメリカの裕福な人たちのお金が欲しいんだ。でも、それ以外の人たちのことは気にしていないよ。これまでずっとそうだったし、これからもそれは変わらないよ」
■スーパーライセンス制度は見直す必要があるとマクラーレンのボス
こうした中、現在マクラーレン・レーシングのCEOを務めているアメリカ出身のザック・ブラウンは、FIAはインディカーに厳しいポイント配分となっているスーパーライセンス制度を見直す必要があると次のように語っている。
「コルトンのようにインディカーで多くの勝利を収めている者にスーパーライセンスを取得する資格がないのであれば、私はスーパーライセンス制度を見直す必要があると思うよ」
現在のスーパーライセンスポイント制度では、例えばF2選手権では年間ランキング1位から3位となったドライバーにはそれだけでスーパーライセンス発給が可能となる40ポイントが与えられる。
だが、インディカーの場合は40ポイントが与えられるのは1位のドライバーだけで、2位は30ポイント、3位20ポイント、4位10ポイントというふうに与えられるポイントが小さくなっており、F2あるいはF3に参戦するドライバーの方がスーパーライセンスポイントを稼ぎやすいという構造になっている。