16日(火)にFIA(F1統括団体の国際自動車連盟)が2026年から適用される次世代F1パワーユニット(エンジン)の技術レギュレーションを正式に承認した。
2026年からF1マシンが搭載することになるパワーユニットは、これまでと同じようにパワフルでありながら、エネルギー消費が大幅に減り、CO2排出量が完全にゼロになるという。
F1公式サイト(formula1.com)には、その次世代F1パワーユニットの特徴が掲載されているが、ここではそのポイントをかいつまんで紹介してみよう。
■新たな化石燃料の燃焼はゼロに
2026年以降のF1パワーユニットは、完全に持続可能な100パーセント合成燃料で走ることになる。つまり、そこではもはや新たな化石炭素が燃焼されることはなく、非食糧資源や廃棄物、あるいは大気中の炭素が利用されるだけとなる。
■電気出力は現在の3倍に
内燃機関は現在の1.6リッターV6ターボエンジンが踏襲されるが、これまでよりもはるかに強力な電気コンポーネントが組み合わされることでより進化した形となる。
熱エネルギー回生システムであるMGU-Hは廃止されるが、運動エネルギー回生システムであるMGU-Kはさらに強化され、現在の約3倍にあたる電力を発生させることができるものとなる。
ブレーキング時の制動エネルギーがより効率的に回生されるようになり、その結果、2026年には現在MGU-KとMGU-Hによって発揮している120kWを大幅に上回る約350kWの出力を可能とすることが目指されている。
■これまでより少ない燃料で1000馬力以上の出力を実現
これまでにレース中に使用することが認められていた燃料は、2013年時点では160kgだったが、2020年にはこれが100kgにまで削減されている。そして、2026年には1グランプリで使用できる燃料は1台あたり70kgにまで減らす方向で研究・開発が進められている。
それでも、電気出力アップにより、パワーユニットは合計で1000馬力以上を発揮し、音もこれまでよりも大きくなる可能性があるようだ。
■安全性のさらなる向上
2026年仕様エンジンでは、MGU-Kユニットがシャーシ内に収められ、バッテリーや制御電子機器と隣接させることになっている。これにより、すべての高電圧機器がセーフティセル内に収められ、より安全なマシンとなる。
■低コストかつ継続的な技術革新が可能に
MGU-Hの廃止に加え、エンジンにもコスト上限が設けられ、パーツの標準化などが図られることで、パワーユニット製造コストも大きく低減することになるという。
さらに、ダイナモと呼ばれる動力計での稼働時間も制限されるが、チームを勝利に導き、タイトル獲得のために電気システムを革新できるエリアは残されており、エンジニアたちの創造性発揮の場は十分にあるという。そして、その過程が、より持続可能な未来を開発することにもつながると期待されている。
なお、2026年以降も1シーズンに使用することができるパワーユニットは1台につき3基までに制限されるようだ。
■ドライバーにとってはより厳しい挑戦に
MGU-Hのような複雑な機構がなくなることで、ターボラグが復活し、コーナー出口でマシンをコントロールするのが現在よりも難しくなる可能性があるようだ。
さらに、これまでよりも電気出力に頼る部分が大きくなることから、ドライバーと戦略担当者はそれぞれのサーキットのどの部分で、どういうタイミングでパワーユニットの電力を効率的に使用するかということに関しても、これまで以上に難しい判断が求められることになる。
■環境に対する責任
F1は環境責任を果たすための努力も強化していくことになる。バッテリーはリサイクルすることが義務づけられるほか、MGU-Kの寿命が尽きたときにはコバルトなどの材料がリサイクルされることになる。