2014年と2015年に2年連続で通算3度目のF1王座を手にしたルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)だが、今シーズンは2レースが終わった時点でチームメートのニコ・ロズベルグにすでに17ポイント差をつけられてランキング2位に甘んじている。
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ロズベルグのほうは、予選でこそハミルトンに後れをとったものの、昨シーズンの第17戦以来5戦連続で優勝を飾り、まさに調子の波に乗っている感じだ。
一方のハミルトンは開幕戦に続いてバーレーンGP決勝でもスタートに失敗。おまけにターン1でウィリアムズのバルテリ・ボッタスと接触したことにより一時は6番手にまで順位を下げていた。
■異常なほどに冷静なハミルトン
だが、今年のハミルトンは、昨年までとはまるで違う人物になったかのようだ。昨年まではロズベルグに負けたレースでは非常に不機嫌になっていたハミルトンが、今年は異常なほどに落ち着いているのだ。
「僕担当のエンジニアたちに言ったんだ。まだ始まったばかりだよってね」
『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』にそう語ったハミルトンは、次のように続けた。
「まだ21レースのうちの2レースが終わっただけだ」
「僕は、自分に何ができるか分かっている」
「このクルマの基礎は非常にしっかりしているし、どちらのレースでもポールをとったのは僕だったからね」
■ボッタスが謝る必要はないとハミルトン
さらに、ハミルトンはスタート直後に後ろからぶつかってきたウィリアムズのバルテリ・ボッタスに対する批判さえ口にしようとはしなかった。
「バルテリは謝る必要なんてないよ。あれは普通のレース中の事故に過ぎなかった」
ちなみに、バーレーンGPのF1競技委員はその事故に関してはボッタスに非があるとしてレース中にドライブスルーペナルティーを科していた。
だが、そのボッタスとの接触によってクルマにダメージを受けたことでロズベルグや2位となったキミ・ライコネン(フェラーリ)を追いかけることができなかったにもかかわらず、ハミルトンは次のような大人のコメントを行っている。
「こういう日にも対処できるほどに僕は成長したのさ」
■ハミルトン、F1がすべてではなくなった?
だが、ハミルトンの姿勢がこれほど落ち着き、穏やかなものとなったのにはほかの理由があるのではないかと考えている者もいる。ハミルトンはシーズンのオン・オフにかかわらず、F1だけでなくさまざまな場に顔を出し、セレブたちとの交流を楽しんでいることでも知られているが、すでにF1がその人生において最優先すべきものではなくなってきているのではないかというのだ。
元F1ドライバーであり、昨年はザウバーと法廷闘争を繰り広げて勝訴したことでも有名となったギド・ヴァン・デル・ガルデは母国オランダの『De Telegraaf(テレグラーフ)』に次のように語った。
「確かに、彼(ハミルトン)は予選では最速だった。だけど、レースではとんでもなく強いという感じは受けなかったよ」
「F1にとってはニコがタイトル争いのトップに立っているのはいいことだ。だけど、僕にはルイス・ハミルトンは自動車レースよりも、それ以外のことのほうにもっと関心があるように見えるよ」とヴァン・デル・ガルデは付け加えている。