フェルナンド・アロンソが、すでにF1タイトルから10年近く遠ざかってしまっているものの、現在所属しているマクラーレン・ホンダのプロジェクトに参加できていることに「喜び」を感じていると主張した。
アロンソに関しては、大きく道を誤ったと考えている者も少なくない。5年間在籍していたフェラーリでF1タイトルに手が届かなかったことで、2015年にマクラーレン・ホンダに移籍する道を選んだものの、予想以上の大苦戦を強いられることになってしまったからだ。
一方、アロンソの後任としてレッドブル時代に4年連続F1タイトルを獲得したセバスチャン・ベッテルを迎えたフェラーリは、うまくすれば今年F1タイトル奪取も期待できるという所にまできている。
そんな中、アロンソはすでにF1からの引退も考えているのではないかとのうわさも流れているほどだ。
■引退など一度も考えたことがない
だが、34歳のアロンソはこうしたうわさを否定し、母国スペインのラジオ局『Cadena SER(カデナSER)』に次のように語った。
「(引退は)考えたこともないよ」
「引退しようとか、休暇を取ろうとか、一度も考えたことがない。僕は自分がドライバーの中で一番才能があるなんて思っていないけれど、この16年間にわたって結果を出すために最大の努力をしてきたドライバーの1人だと思っている」
「身を引くとか、1年間休むなんていうことは僕の性格からして考えられないことさ」
アロンソは、とりわけF1の世界においては、勝てるクルマをあれこれと模索することはよくあることだと次のように続けた。
「スポーツでは、勝者になれるのは1人だけだ。そしてF1では誰が勝つのかという予想はすごく簡単なんだ。最初から自分が勝てるのか勝てないのかが分かってしまうんだ。これは残酷なことだよ」
■マクラーレン・ホンダでは喜びを得られている
2005年と2006年にルノーで2年連続F1チャンピオンになって以来、アロンソはだんだん勝利の女神から見放されてきているように見える。フェラーリではわずかの差でタイトルを取り逃がしたこともあったが、今ではスランプに陥ったマクラーレン・ホンダでポイントを取るにも四苦八苦している状況だ。
しかし、アロンソはこうした見方に対して次のように反論した。
「運が変わったなどとは思っていないよ。これが1人しか勝てないというスポーツの特性なんだ」
「フェラーリではタイトルに近づいたこともあった。今マクラーレンではまだプロジェクトを始めたばかりだし、まだこの先の道のりは遠い。僕たちは改善しようと努力しているし、常にさらなる改善を行い、速くなりたいと考えている。でも僕のやる気は失われたりなどはしていないよ」
「成功は非常に一時的なものなんだ。大事なのは自分がやっていることに喜びを見つけ出すことさ。常に改善をしていくことでね。ここ数年で、僕はそれを得られているよ」
■2015年はつらかった
もちろん、それは2015年にアロンソが不満を感じていなかったという意味ではない。アロンソが無線を通じてホンダエンジンを「GP2(下位カテゴリー)のエンジンだ」とか「恥ずかしい」と叫んでいたという事実は消せない。
「すごく大変だったよ」とアロンソは続けた。
「不満を抱えていた。チャンスなどまったくなかったからね。10周もすればシリンダーが壊れたり、バッテリーがもたなくなったりすることが分かっている状態でピットを出ていたんだからね」
「僕は怒っていたわけではないんだ。プロジェクトはまだ初期段階だったし、熟成度を高めるためには全員が同じ方向を向くことが必要だった。僕たちがやっていたのはそういうことなんだ」
■表彰台を狙うには大ジャンプが必要
2016年には表彰台を狙えるクルマを手にすることができそうか、と質問されたアロンソは「様子を見よう」と答え、次のように続けた。
「僕たちはすごくレベルが低い所から始めたから、改善の余地はすごく大きいんだ。そこ(表彰台)まで行くには、ものすごく大きな改善が必要だよ」
一部には、ホンダのパワーユニットは最強メルセデスに対してまだ200馬力も劣っているようだとの報道も行われている。だが、アロンソはこれに関して次のように否定した。
「200馬力なんてありえないよ。僕たちのパワーが劣っているのは確かだろう。30馬力から80馬力の間じゃないかな。だけど200ってことはないよ」
「まだ改善すべきことがあることが分かってはいるものの、クルマの感触はいいよ。でも、メルセデスAMGはまだ別のカテゴリーだね」
「表彰台にはまったく手が届かないとも思っていない。すぐにそういう結果が出せれば僕も驚くだろうと思うよ。序盤の数レースではまだすべてがうまく機能することはないと思う」
■今のF1は複雑過ぎる
2月22日から4日間にわたって行われた今年最初のF1公式シーズン前テストの最終日には、クルマのトラブルによりアロンソはわずか3周しかできずに終わっていた。その光景は、まさに悲惨と言うしかなかった2015年シーズンを思い起こさせるものだった。
「最終日は最悪だったね」と認めたアロンソは、次のような説明を行った。
「エンジンを交換するのに3時間か4時間かかるし、壊れた部分の修復には11時間もかかってしまったんだ」
「今のF1は理解するには非常に複雑だと思うよ」
今のF1よりも、かつて自分がタイトルを取ったころのF1のほうが好きだと思うかと質問されたアロンソは、うなずきながら次のように答えた。
「イエスだね。というのも、クルマが遅くなってしまっているからさ。今は空力効果がすごく制限されているし、車重も120kg増えているんだ」
「だけど、以前からドライバーよりもエンジニアのための選手権だったようなものだよ」
そう語ったアロンソは、F1人気が低迷していると言われている現在においても、自分のファンはちゃんとついてきてくれていると次のように付け加えた。
「どの国においてもF1の観客数や人気は低下している。レースがちょっとばかり退屈なものになっているし、面白みも薄れてきているからね。だけど、僕はみんなからより多くの愛を感じているよ」