いよいよ、今週末のF1最終戦アブダビGP(23日決勝)で今季のF1チャンピオンが決定することになる。
現在、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンは、チームメートでありタイトル争いのライバルであるニコ・ロズベルグに対して17ポイントの差をつけている。だが、今年の最終戦は大きな議論を呼んだダブルポイントが適用されるため、ロズベルグがタイトルを獲得するチャンスも十二分に残されている。
だが、元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは、ロズベルグが逆転でF1タイトルを取るチャンスは少ないだろうとドイツの『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に次のように語った。
「残念だが、ニコは2レース前にもっと差を縮めておくべきだった」
「彼はオースティン(第17戦アメリカGP)で勝っておく必要があったんだ。シルバーアロー(メルセデスのレースカーの愛称)は非常に優れているから、ハミルトンなら楽に2位でフィニッシュできるよ。何かとてつもないことが起こらない限りね」
事実、仮にロズベルグがトワイライトレースとなる最終戦で優勝しても、ハミルトンは2位になりさえすればキャリア2回目となるF1タイトルを獲得することができる。
これに対し、元F1ドライバーのアレックス・ブルツは、ハミルトンの性格を考えれば、ロズベルグにもまだ一発逆転のチャンスが残されていると考えている。
「ルイスは、向かうところ敵なしだと思っているときに限ってミスを犯す傾向があるんだ」とブルツはコメントしている。
■タイトル決着後の心配をするヴォルフ
どちらが勝つにせよ、ここまで同じチームで激しい戦いを繰り広げてきたハミルトンとロズベルグにとって、敗北を素直に受け入れることは難しいだろう。
メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフは、『Mirror(ミラー)』紙に対し、スポーツ心理学者として知られるセリ・エバンス博士が2014年シーズンの最終戦で日曜日(23日)に結果が出るまで待機することになっていると語っている。
そのヴォルフは、すでに敗者に対するなぐさめのような言葉を口にしている。
「現時点ではまだどういう結果になるかは分からないが、どちらにもこれから先まだ長いキャリアが残されているし、今後何年も活躍できる力を持っていることをすでに証明してみせている」
『Express(エクスプレス)』紙にそう語ったヴォルフは、次のように付け加えた。
「トップドライバーというものは常に次のチャンスを狙うだけの能力を持っているものだし、うちの2人はどちらもそれができるドライバーだということを証明しているからね」
■平静な気持ちで最終戦に臨むとハミルトン
一方、ハミルトン自身は、ダブルポイント制によってすべてを失う可能性があるものの、アブダビに向けては最大の準備が整っていると主張。ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「どんな結果になるにせよ、僕はこのタイトルを勝ち取るためにできることはすべてやってきた。だから今は落ち着いた気分だよ」
「ダブルポイントは不公平かって?」
少々大げさな口調でそう語ったハミルトンは、「それは誰にとっても同じ条件だから、誰にとっても不公平だと言えるんじゃないかな」と続けた。
■落ち着かないのはチームスタッフのほう?
だが、タイトル決着の天王山を迎えた今、ただ落ち着いて成り行きを見守り、ルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグのチームメート同士の戦いを楽しむ気分でないのは彼らが所属するメルセデスAMGのチームスタッフだろう。
仮に、ハミルトンもしくはロズベルグがクルマのトラブルでリタイアに終わるようなことになれば、たとえどちらが勝つにせよ、汚点を残してしまうというリスクを抱えているからだ。
イギリスの『Telegraph(テレグラフ)』は、メルセデスAMGでは過去数戦において必死にエンジンの使用距離を抑えることに努めてきたと書いている。それはもちろん、どちらのドライバーにとってもアブダビで信頼性の問題が発生しないようにするためだ。
「クルマを最高の状態にしておこうと頑張っている」
そう認めたヴォルフは、『BBCラジオ』に次のように続けた。
「ドライビングに関しては、彼らは何をすべきか分かっているからね」
■最終戦では完全に公平な戦略適用か
事実、今季最高のパッケージであるメルセデスAMGのW05を手にした2人のドライバーには、2014年シーズンを戦うにあたって一定のルールが与えられていた。
ヴォルフは、オーストリアの放送局『ORF』に対し、「2人も、我々のルールの範囲内でどれだけ差をつけられるか頑張ることになる」と語っている。
だが、最終戦のアブダビではひとつのルールについては適用されないことになるようだ。ヴォルフは次のようにほのめかした。
「我々のルールのひとつは、それができる状況であれば、常に1-2フィニッシュを目指すというものだ」
「仮に、どちらか1人が順位を落とすようなことがあれば、我々はそちらのドライバーのほうにより攻撃的なエンジンセッティングを施すことで、できるだけ早く2番手の位置に返り咲くことができるようにしてきた」
ドイツの『Kolner Express(ケルナー・エクスプレス)』は、このルールはアブダビでは適用されないだろうと書いている。そうなれば、どちらのドライバーも常に同じエンジン戦略のもとで戦うことになる。
ヴォルフは次のように付け加えた。
「数値的にはルイスが有利なのは間違いない。だが、ニコもF1チャンピオンとなるにふさわしいドライバーだ」