F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が、先週末のF1イタリアGP(第13戦)決勝後にささやかれた陰謀説を一笑に付した。
【結果】F1第13戦イタリアGP決勝の順位、タイム差、周回数、ピット回数
イタリアGPのレース後、複数のメディアが、メルセデスAMGのニコ・ロズベルグがベルギーGPでのクラッシュによりチームメートのルイス・ハミルトンをリタイアに追い込んだことへの「償い」として、わざとターン1でブレーキングのミスを犯し、ハミルトンに優勝をプレゼントしたのではないかとの疑いの目を向けた。
■ロズベルグの2度のミスを疑問視する声
イタリア有数の日刊スポーツ紙である『Corriere della Sera(コリエーレ・デラ・セラ)』でさえ、メルセデスAMG勢の順位が入れ替わったのはロズベルグの「2度にわたる奇妙なミス」によるものだったと報じている。
さらに、イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』が行った読者投票によれば、あのロズベルグの2度のミスが本当のミスだったと信じている者はわずかに22パーセントに過ぎなかったという。
2位となったロズベルグが、イタリアGPの表彰台でも大きなブーイングを受けた理由にはそれもあったのかもしれない。
■ライバルチームや元F1ドライバーも同調
ライバルチームのレッドブルでモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコも、『Bild(ビルト)』に次のように語った。
「彼(ロズベルグ)は、本当に同じ場所で同じブレーキングミスを2回も犯したのかねぇ?」
さらに、元F1ドライバーで現在は解説者を務めるマルク・スレールも、ビデオ映像を見ながら「変な感じは受けるね」と述べた。
ロズベルグがブレーキングミスを犯した際、テレビの画面には不思議なほほ笑みを浮かべるトト・ヴォルフ(メルセデスAMG/ビジネス担当エグゼクティブディレクター)の表情が映し出されていたことが、その疑念をさらに強めたこともあるようだ。
■バトンはこうした推測を完全否定
だが、現役ドライバー中最多F1出走数を誇るマクラーレンのジェンソン・バトンは、そうした秘密の「チームオーダー」が出されていたのではないかとの説を真っ向から否定し、次のように語った。
「そんな説はばかげているよ。そんなことをするドライバーは誰もいないよ」
「誰もいやしない」とバトンは強調した。
■メルセデスAMGはジョークで反論
そして、メルセデスAMGは、8日(月)にツイッターの公式アカウントに空を3匹のブタが飛んでいる画像を添え、「ブラックリー(メルセデスAMGの本部)の空で劇的な光景が目にされた。#NR6(ロズベルグ)がF1世界選手権のライバルである#LH44(ハミルトン)に#ItalianGP(イタリアGP)の優勝を手渡したのだ」とするつぶやきを掲載。「ブレーキング・ニュース」(ニュース速報の意)というしゃれたタイトルを付けたツイートを書き込むことで、こうした疑念に対してジョークで切り返している。
そして、FIAの競技委員もロズベルグのミスが故意だという説に反論を行った。
モンツァでドライバー経験者としてスチュワード(競技委員)を務めていたデレク・ワーウィックは、『Mirror(ミラー)』に対し、イタリアGP決勝の間、ロズベルグのミスに関しては「検討の対象にもなっていなかった」とし、次のように続けた。
「直感的に分かることもあるし、私の直感ではあれはまさしくミスだったと思っている」
そう語ったワーウィックだが、いずれにしても「メルセデスAMGがチームオーダーを出すことは認められている」としながらも、次のように付け加えた。
「あのシケインでは、週末を通じて20回以上のミスを見てきたよ」
■FIAも疑惑を否定
FIAのF1競技委員長であるチャーリー・ホワイティングは、そうした陰謀説に対してさらに厳しい批判を展開している。
「勘弁してくれよ」と『Times(タイムズ)』紙に語ったホワイティングは、さらに次のように続けた。
「我々はそうした陰謀説が一瞬たりとも脳裏に浮かんだことはないよ」
「あのシケインではフリー走行のときに大勢のドライバーが問題を抱えていたし、ニコもそうだった。彼はレースのときにも、あそこでいくつか問題を抱えてしまったのさ。そういうこと(故意のミス)が行われたなどとは全く考えていないね」
こうした陰謀説に憤慨を隠せないメルセデスAMGのニキ・ラウダ(非常勤会長)は、次のように語るのみだった。
「きっぱり言うが、我々はチームオーダーなど出していない。以上」