現役ナンバー1ドライバーとの呼び名の高いフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)の一言が、ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)の2014年のシート探しを後押ししたかもしれない。
先日のF1第14戦韓国GPでは、急速に目覚ましい走りを取り戻しているザウバーのマシンで、アロンソやルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)といったF1歴代チャンピオンの猛攻から見事に順位を守り切ったヒュルケンベルグ。それにもかかわらず、資金を援助してくれるスポンサーがついていないことや、高すぎる身長が来季からのクルマに不向きであるとして、ヒュルケンベルグの2014年F1残留そのものが危ぶまれている。
各国のメディアは、「完ぺき」で「素晴らしい」レースをしたとして、アロンソがヒュルケンベルグを称賛していると報じている。
『EFE通信』は、アロンソのコメントを次のように伝えている。
「ヒュルケンベルグが僕たちの前でフィニッシュしたのは当然のことだった」
「彼のレース運びは圧巻だったからね」とアロンソは語っている。
さらに、「ザウバーは今週末、絶好調のようだね。素晴らしい仕事をしている」と続けた。
アロンソのコメントは、所属チームであるフェラーリをちくりと批判したとも解釈されかねない。なぜなら、現在深刻な財政問題を抱え、シーズン序盤はまったくと言っていいほどクルマに競争力がなかったザウバーは、フェラーリと同じエンジンを搭載しているからだ。
「彼(アロンソ)はフェラーリを出たくて仕方が無いのだと思う」
そう語るのは、イタリア紙『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』の著名な記者ピノ・アリービだ。
「だが、彼にはできない」とアリービは続けている。
また、アロンソは、シーズン途中にピレリが行ったタイヤ構造の変更が、いかに一部のチームを飛躍させ、ほかのチームに打撃を与えたかの最たる例として、ザウバーを引き合いに出している。
しかし、ヒュルケンベルグはブラジルの『O Estado de S.Paulo(オ・エスタード・ジ・サンパウロ)』紙に次のように話している。
「新ピレリタイヤは、チームの現状を説明するのに一役買ってはいるけど、これだけがすべてではない」
「僕たちはクルマも改善した。だから半々ってとこかな」と付け加えた。
現に、ヒュルケンベルグはいま、ザウバーでとても満足そうだ。少し前まで2014年残留の可能性は極めて低いと言われていたのがまるでうそのようである。
「(フォース・インディアからの移籍を)後悔しているって言ったら、それは言い過ぎになる」とヒュルケンベルグはフランスの『L'Equipe(レキップ)』に語った。
「でも、あまり満足はしていなかった。だって、さらに上を目指そうと思って移籍したのに、実際には後退していたんだからね」
「でも、人生で重要な選択をするとき、それが吉にも凶にもなる可能性がある。1番大切なのは、それを自分の思い通りに変えようと努力することなんだ」とヒュルケンベルグは付け加えた。
「7戦か8戦を終えたころ、特にこれといった改善の兆しは見受けられなかった。でもある日突然、転機が訪れたのさ」
自身に訪れたその「転機」により、2014年の見通しが明るくなることをヒュルケンベルグが切に願っていることは間違いない。
しかし、パドックの中には、F1界で現在最も評価がうなぎ登りのヒュルケンベルグがいまだ来季のシートを確保できておらず、躍起になって様子に驚きを隠せない者もいる。
ヒュルケンベルグのマネジャーを務めるヴェルナー・ハインツは、ドイツ紙『Bild(ビルト)』に対し、「トップチームの中で、(2014年の)シートにあまり空きが出なかったとしか言いようがない」と述べた。
「私たちはまだ話し合いの最中だ。だが、ニコは間違いなくF1にとどまる」とハインツは強調した。