今季限りでのF1引退を表明したマーク・ウェバー(レッドブル)の後任にレッドブルがキミ・ライコネン(ロータス)を選ばなかった理由のひとつは、ライコネンの年齢だった。
レッドブルが姉妹チームのトロロッソからダニエル・リカルドを昇格させる契約にサインするまでに、最も発言力を持っていたのは、レッドブルのアドバイザーでチームのオーナー企業レッドブルの総帥ディートリッヒ・マテシッツにとって右腕であるヘルムート・マルコだった。
そのマルコは、ドライバー決定の経緯を『O Estado de S.Paulo(オ・エスタード・ジ・サンパウロ)』 にこう明かしている。「目の前のことだけでなく、長い目で見たときに、我々にとって最良と言える決断を下した 」
「キミは何歳だ、34歳か? ダニエルは24歳だ。そして、契約は3年だ」
「だから、チームに最も利をもたらせるのはダニエルなんだよ」
しかし、マルコは現在33歳のライコネンの年齢だけでなく、トップドライバーのひとりに数えられるライコネンのF1でのステータスも、ライコネンにとって不利にはたらいたことを明かした。
「セバスチャン(ベッテル/レッドブル)とキミのような二人のドライバーを管理するのは簡単じゃない」
「どちらも最高の状態にいさせなくてはならない」
それでは、リカルドはその点はどうなのかと聞かれると、「本人が知っているよ」とマルコは話し、こう続けた。
「3戦か4戦後にはセバスチャンに挑むようになることを期待している」
「ベッテルを倒さなくてはだめだと言っているわけじゃない。わたしが彼に望むのは、コンストラクターのタイトルをとれるだけのポイントを手に入れることだ」
この発言は、ある意味でライコネンがレッドブルと契約しなかった理由であるとも言えるだろう。つまり、レッドブルはウェバーの代わりを求めていたのであって、もうひとりのベッテルを探していたわけではないのだ。
「ダニエルには、マークと同程度の速さを求めている。マークはセバスチャンに匹敵するレベルを見せることもあったし、ときにセバスチャンを越えることすらあった」
現役最強ドライバーとも言われるフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)獲得に興味を示さないのも、ライコネンを望まないのと同じ理由からだろう。
「アロンソとは一緒に働いたことがない。こういう組み合わせ(二人のF1チャンピオン)では、二人のドライバーの性格を知っていなければならないんだ」
「うまくいく場合もあれば、うまくいかない場合もある。見たところ、アロンソはいい関係でいられるケースではないように思う」
年齢と、ベッテルのサポートには決して収まらないチャンピオンという肩書とドライバーとしての評価に加えて、ライコネンとの契約に至らなかった理由がまだあるとマルコは言う。
「2014年は技術規約が大きく変更されるため、最高の、そして最も賢いドライバーが上位を占める」
「トラクション・コントロールのないターボエンジンの使い方をいかにして学ぶか、ふたつのエネルギー回生システムをどう使いこなすか、さらにいかにして燃費をコントロールするか」
「我々は、すでにドライバーのためにシミュレーションプログラムも組み始めている。これもまた、ダニエルを選んだ理由のひとつだ」