新車MP4-28が重大な問題を抱え、悲惨な2013年F1シーズン開幕となったマクラーレン。決勝終了後、日の暮れたメルボルンのパドックで持ち上がったのは、果たしてマクラーレンがマシンをあきらめるかどうかといった話題だった。
2012年はマクラーレンが全チーム中で、最速のマシンだったのは明らかだ。そんな2012年型マシンを進化させればよいものを、チームはこの冬、流れに逆らうかのように一から設計し、中身を大きく変えてきた。
その結果MP4-28は前年とまったく違うマシンになったが、競争力が低いクルマに仕上がってしまった。
17日(日)、世界中のマスコミに囲まれたセルジオ・ペレス(マクラーレン)は次のように語った。「そうだね、それほど理由は単純ではない」
「僕らが抱える問題は、ひとつやふたつで済まないんだ」
2012年最終戦F1ブラジルGPでは、ペレスのチームメートであるジェンソン・バトンがMP4-27を駆って優勝を果たしている。
それから数ヶ月が経過した2013年開幕戦オーストラリアGPのレース終了後、マクラーレンの技術者たちが問題解決に要する時間について考えをきかれたバトンは、暗い表情で「道のりは長い」と応じている。
昨年から今年にかけて規則が小変更にとどまったことから、アルバート・パークで浮かび上がったのは、こんな疑問だった。マクラーレンはさっさとMP4-28をあきらめ、すべてを2014年型車に注力するかどうか。あるいは、ガレージにしまった2012年型車をもういちど引っ張り出すのか。
チーム代表のマーティン・ウィットマーシュは、次のように語った。「そのうち分かるさ」
可能性は低いが、今週末に入ってウィットマーシュは、2012年型マシンの再利用が“あり得る”ことを示唆している。
もっとも、ドライバーのペレスは17日(日)、それは“選択肢にない”とコメントしていた。
開幕戦はポイント獲得も心配されたが、何とかバトンが9位に入り2ポイントを取った。しかし、旧車にスイッチする可能性は間違いなく増した。
「どこでどう間違ったかというのは、別に恥ずかしいことではない」と、ウィットマーシュは語り、次のように続けた。
「マシンに対策を施すのは可能だと思う。だが、もしそれができなかったら、あらゆる選択肢を検討するよ」
10年前の2003年、マクラーレンは当時のデザイナー、エイドリアン・ニューイ(現レッドブル)による、とがった針のようなざん新なノーズを持つ新車、MP4-18を走らせるつもりだった。しかし、結果的にそのマシンが実戦に投入されることはなかった。代わりに、2002年型を進化させたマシンで戦ったのだ。
マクラーレンは、いかに素早く10年前と似た戦略に切り替えることができるのか。
「どうだろうね。今週末(の第2戦マレーシアGP)じゃないことだけは確かだ」と、ウィットマーシュはイギリスのTV局『Sky(スカイ)』に話している。