キミ・ライコネン(ロータス)は、F1アブダビGP(11月4日決勝)でF1復帰後初の優勝を飾ったが、いかにもライコネンらしいところをずい所に見せた。
かつてはロボットのようだ、内向的だと揶揄(やゆ)されたこともあるライコネンだが、今はすっかり「アイスマン」の名で愛されている。メディアがつけたニックネームだが、今では本人も腕にタトゥーとして入れるまでになった。
ライコネンは、2007年にF1ワールドチャンピオンを獲得し、2009年末でいったんF1を離れて今年ロータスから復帰した。ブランクを感じさせない走りは見せていたものの、優勝は難しいだろうという見方もあったが、アブダビGPで優勝して、疑問を見事に打ち消してみせた。
トップを走行中に、エンジニアが無線で状況や、やるべきことを伝えると、ライコネンはこう言った。「ほっといてくれ。やるべきことは分かっている」
レース後、表彰台でインタビュアーを務めたマクラーレン時代のチームメート、デビッド・クルサードは、今の感動を伝えてくれとライコネンにマイクを向けた。
「それほどでもないよ」とライコネンはいつもの調子で答えた。
「この前(2009年F1ベルギーGPでの優勝)は、あまり笑わなかったといって、(メディアは)馬鹿にけなしてくれた。また今度もそうするのかもね」
その後もライコネンはほかの記者にこう話している。「言ったように、うれしいよ。だけど飛び回って喜ぶほどのことじゃない」
酒豪とも言われるライコネンだが、アブダビはイスラム教国のため、表彰台でもシャンパンの代わりにローズ・ウォーターが使われた。しかしライコネンは、場所を変えて祝勝会をすると語った。
優勝を祝うのに「何日間」費やすかと聞かれると、ライコネンはこう答えた。「次のレースにちゃんと顔を出せさえすれば、チームも文句はないと思うね」
また、「ロータス」という名のチームが優勝したのは、1987年のアイルトン・セナ以来だと聞いても、ライコネンはまったく感動を示さなかった。
「ただの名前だ」とライコネン。「フェルナンド(アロンソ/フェラーリ)がいた頃と同じチーム(当時はルノー)で、ただ名前が変わっただけだ」
「すごい名前だし、いい歴史もある。でも、チームのためにレースするだけだ。それがどんな名前でも、どうでもいい」とライコネンは語っている。