スペインのバレンシア市街地サーキットで行われるヨーロッパGPは、「退屈」だと言われてきた。常設サーキットに比べて道幅が狭い市街地サーキットでは、コンクリートの壁が近いこともあって抜きどころが少なく、あまり追い抜きが見られないのが常だ。しかし、24日(日)のレースで確認された追い抜きは、今シーズンで2番目に多い回数だった。
2008年の初開催以来、1列目からレースをスタートしたドライバーが優勝してきたこのグランプリで、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が6列目から優勝をもぎとった。セーフティカーや上位を走るクルマのリタイアなども要因のひとつではあるが、予選11番手のクルマがトップに上がるには、当然、前を走るクルマを追い抜かなくてはならない。レース開催前には、ジェンソン・バトン(マクラーレン)やマーク・ウェバー(レッドブル)が、バレンシアでレース中に順位を上げるのはほとんど不可能だと語っていた。
しかし、フィンランド紙『Turun Sanomat(トゥルン・サノマット)』が確認したところ、先日のヨーロッパGPでは実に58回もの追い抜きが見られていた。これは、2012年シーズン開幕以来2番目に多い回数だ。
DRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)導入元年だった2011年のバレンシアでは、DRS作動区間が2ヶ所設定されていたにもかかわらず、追い抜きは29回しか確認されなかった。
24日(日)のレースで最も多く前のクルマを抜いたのはウェバーとルイス・ハミルトン(マクラーレン)で、それぞれ6回の追い抜きを成功させている。2人に続くのはレースで優勝したアロンソ、ビタリー・ペトロフ(ケーターハム)、ミハエル・シューマッハ(メルセデスAMG)で、それぞれ5回の追い抜きを行った。
コース上で6台のクルマを抜き、予選19番手から4位まで順位を上げたウェバーはレースを振り返って、「クレイジーな1日だった」と語っている。
2012年シーズン第8戦終了時点で、各グランプリの追い抜き回数は、最も多かった中国GPで72回、次いでヨーロッパGPの58回。そしてバーレーンGPの40回、スペインGPの38回、カナダGPの35回、開幕戦オーストラリアGPの30回と続き、抜けないサーキットとして有名なモナコGPは9回の追い抜きが確認されている。