新Fダクトが議論の的になっているメルセデスAMGが、自チームに向けられているルール違反疑惑をレッドブルに向けた。
Fダクトとは、2010年のF1で流行になった技術で、車体に作られた穴から空気を取り込み、リアウイングのすき間から放出することで、一時的にウイングの効果を弱めて最高速を向上させるシステムで、翌2011年から禁止された。メルセデスAMGの2012年型車W03が搭載するとされる今年のFダクトは、ドライバーが操作する必要がないためルールには違反していないとされる。
だが、この技術はルール違反だと異議をとなえるチームもあり、その筆頭がレッドブルである。メルセデスAMGのチーム代表ロス・ブラウンは、こうした批判を陽動作戦のように感じるという。
「われわれのシステムに対する議論によって、排気についての問題から目がそらされている」と開幕戦が行われたオーストラリアでブラウンが語った。
レッドブルが2010年と昨年タイトルを2連覇した原動力は、エンジンからの排気を空力パーツであるディフューザーへ意図的に当てることで、より大きなダウンフォースを得るブロウン・ディフューザーシステムだった。この技術は2011年に多くのチームが採用していたが今季から禁止するため、F1の統括団体FIA(国際自動車連盟)が規制に乗り出した。
しかし、2012年型車に新ルールで認められている範囲ぎりぎりのデザインを施しているチームもあると伝えられており、開幕前の話題はもっぱら排気系統の処理に関するものだった。
だが、ドイツ紙『Bild(ビルト)』が今回報道したところによると、メルセデスAMGが疑っているのは、排気とは違う部分だという。
この報道によれば、メルセデスAMGの音声分析で、レッドブルの搭載するルノーエンジンが「ルール違反のエンジン操作」を行っていることを示唆する結果が出たという。8つあるエンジンのシリンダーを個別に開閉する技術にかかわるものではないかと記事は伝えている。
メルセデスのモータースポーツ責任者ノルベルト・ハウグは、このようなコメントを残した。「われわれは公式な抗議を行っていない。だが、FIAに質問していることはいくつかある」
これに対し、レッドブルのアドバイザーを務めるヘルムート・マルコも反論した。「見つけられるものなど何もない。われわれはルールを守っている」
一方、排気の処理に関しては、ドイツの専門誌『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』が、現在最も洗練された新方式を採用しているのは、開幕戦オーストラリアGPで勝利を収めたマクラーレンだと報じた。
マクラーレンと同様のデザインを採用しているザウバーのチーム代表ペーター・ザウバーは「ルール違反だとは言わない」と述べつつも「だが認められている範囲ぎりぎりだ」と言っている。
オーストラリアGPで、ルール内のより安全な手堅いデザインを採用していたと報じられているのは、メルセデスAMG、ロータス、トロ・ロッソ、ウィリアムズである。
「われわれはまず、何が認められて何が認められないのかを見極めたい」とウィリアムズのチーフオペレーションズエンジニア、マーク・ジランはその理由を説明している。