メルセデスの元モータースポーツ責任者であるノルベルト・ハウグは、メルセデスが2021年のF1最終戦アブダビGPの結果について異議申し立てを行うことは好ましいことではないと考えているようだ。
「彼らはパートナーチーム(ウィリアムズ)が壁にぶつかるのを見たし、セーフティカーが出れば自分たちにとって難しいことになるのは誰もがわかっていた」
2012年シーズンまでメルセデスのモータースポーツ活動を率いていた69歳のハウグはそう語ると次のように続けた。
「たとえ彼らが何をしたとしても、問題を抱えることになった。だから当然、怒りが生じるだろう」
「彼らは何も間違ったことはしなかったが、それでも負けてしまった。しかし、素晴らしいシーズンだったということを忘れるものは誰もいないだろう」
元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーもハウグと同意見だ。
「最終的には、ほんの少しの運が勝敗を分けたんだ」
「マックスがしばしば世界チャンピオンになることで、F1は今後数年で本当に飛躍すると私は思うよ」
かつてトロロッソの共同オーナーを務めていたこともあるベルガーは次のように付け加えた。
「スポーツには常に勝者と敗者が存在する。非常に互角である場合は余計に辛いことだし、みんなの感情も理解できるよ」
かつてはメルセデスの一員だったハウグだが、メルセデスがFIA(F1統括団体の国際自動車連盟)の決定を不服として正式に異議申し立てを行うようなことはやめた方がいいと考えているようだ。
「このような異議申し立てが支持されることは、普通はあまりないよ。メルセデスの立場でこの件を考えるつもりはないが、モータースポーツはこのような敗北を受け入れなければならないということを教えてくれるものだよ」
ドイツ出身のハウグはそう語ると、恐らくルイス・ハミルトンがマクラーレンに在籍していた当時のことに言及しながら、次のように付け加えた。
「私は、2人のドライバーの差がわずか1ポイントでF1タイトルを逃したときの気持ちを知っているよ。本当の痛みは5日後にやってくるんだ」
2007年にマクラーレン/メルセデスでF1デビューしたハミルトンは一時タイトル争いをリードしていたものの、最終戦でキミ・ライコネン(当時フェラーリ)に1ポイント差で逆転され初タイトル獲得を逃している。また2008年には逆にハミルトンが1ポイント差でフェラーリのフェリペ・マッサをかわして初のF1タイトルを手にしていた。
一方、元F1チームオーナーであるエディ・ジョーダンは、ハミルトンが最終的にタイトルを失ったのは、2016年にチームメートのニコ・ロズベルグに敗れたものの、ロズベルグが引退した2017年以降は毎年圧倒的な差でタイトルを手にしていたこともあって今年は少し「甘さ」が出てしまったものの、24歳のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)はそうではなかったと語っている。
7年目のF1シーズンで初のF1チャンピオンに輝いたフェルスタッペンも、初のタイトル獲得を目指す自分の執念がすでに7回もタイトルをとっているハミルトンの気持ちを上回ったのではないかと示唆するように次のように語っている。
「今年ほどルイスに対して激しくドライブしたことはなかったよ。今回は違った」
「すべてのレースで全力を出し切らなければならなかったし、弱音を吐くわけにはいかなかった」
「もちろん、彼にとって敗戦は残念なことだっただろう。だけど、彼は常にプロフェッショナルだったよ」
「彼はすでに7回タイトルを獲得しているけれど、僕にとっては初めてのタイトルだったんだ」
そう語ったフェルスタッペンは次のように付け加えた。
「彼はこの敗北を受け止めてくれると思うよ」